2011年8月6日土曜日

CPI改定直前、デフレが続く

7月の終わりに発表された消費者物価指数(CPI)を確認しておこう。

概況
(1) 総合指数は平成17年を100として99.9となり,前月比は0.1%の下落。前年同月比は0.2%の上昇となった。

(2) 生鮮食品を除く総合指数は99.7となり,前月比は0.2%の下落。前年同月比は0.4%の上昇となった。

(3) 食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数は97.3となり,前月比は0.1%の下落。前年同月比は0.1%の上昇となった。

前年同月比は3つの指標とも上昇しているのものの、小幅なものでしかない。しかも、消費者物価指数は基準年の改定が近づいているのだ。

CPIの誤差を是正する手段は幾つか導入されているものの(参照)、今のところどうにもならないのが時間経過による誤差だ。なので五年に一度、物価の基準年が改定され、各商品等のウエイト付も変更される。

前回の改定は2006年に行われ、基準年が平成17(2005)年になった。その結果、CPIは改定前よりも0.5%押し下げられた。つまり2006年頃には見かけ以上にデフレが深刻だったということだ。にもかかわらず、日銀は、改定前にCPIがプラスであることを理由に、量的緩和政策を解除してしまった。

さて、今回の改定を目前に控え、内閣府は次のような発表をした。

現時点で把握できる品目の入れ替えや、指数の基準時を2010年に変更することの算術的な効果(指数のリセット効果)を踏まえ、消費者物価のコアとコアコア指数を試算すると、2011年1~6月の前年同期比は平均で-0.7~-0.8%ポイント前後の押下げ効果が見込まれる。

ということで、おそらく今現在の物価状況はCPIの数字より相当低そうだ。日銀が前回のような暴挙に出ることはないと思うけど、これを放置することだって十分暴挙といえる。

ちなみに経済財政報告では、CPIの改定について触れたすぐあとで、デフレ脱却のための処方箋を載せている。

物価動向を規定する要素として、需給ギャップとともに重要な要素は人々の期待物価上昇率の変動である。将来的な期待物価上昇率が安定していれば、例えば一時的に石油価格が上昇しても他の価格には波及しにくく、物価全体としてはインフレになりにくい。逆に、人々が物価下落の長期化を予想すれば、需給状況が改善しても最終価格への価格転嫁は難しく、デフレ傾向は改善し難い。すなわち、デフレ脱却のためには人々の期待物価自体を安定的なプラスにする必要がある。
同上 (上のリンク先からちょっと下の部分をみてください)

さらに巷で噂のデフレ人口減少原因説についても、

(略)生産年齢人口が減少している日本、ドイツ、エストニア、ハンガリーについては、物価上昇率はまちまちであり、5%を超える物価上昇率のハンガリーから物価下落の日本まで相当の幅がある。ここでも、生産年齢人口の減少と物価下落が併存しているのは我が国だけである。
こうした単純な相関関係を見る限り、生産年齢人口が減少しているからといってデフレになるとはいえない。生産年齢人口の減少が物価下落に結びつくための仲介的な、第三の要因があって初めて、我が国のような生産年齢人口の減少と物価下落の併存が生じていると考える方がよさそうである。

とバッサリ。

前回のエントリで高橋洋一さんの「ちょっと風が吹けばリフレ政策が実現する可能性がでてきます」という言葉を引いたけれども、ホントそんな感じ。

とりあえず改定後日銀が何を言い出すのか、野田大臣ばりに注視していきたい。

2011年8月4日木曜日

エコノ3アミーゴス観察記

ブログサボってました。久しぶり過ぎてbloggerの編集ページが一新してるの知らなくてびっくりです。再開です。

ustreamに高橋洋一さん、田中秀臣さん、上念司さん三人揃ってエコノ・スリー・アミーゴスのトークライブ「震災増税2011、日本は二度死ぬ !」の動画があるということで見てみました。三時間くらいあるので何回かに分けて、MINECRAFTブランチ・マイニングをしながら、見るというより聞いている感じでしたけど、お硬くなく、楽しげで、そしてかなり過激でとても面白かったです。

なんといっても高橋さんの官僚話がスゴイです。基本的には官僚についてのトークがメインで、政策の話はおまけ程度なので小難しいということもなく、三時間があっという間でした、途中歌もあるし。

うろ覚えですけど高橋さんの官僚話をまとめてみます。スッカスカのまとめなので興味を持たれたら動画を見てください。

  • 官僚は利益を求めて動いている。
  • 官僚にとっての利益は天下り先の確保。
  • 財務省が税収増ではなくあくまで増税にこだわるのは、新しく増税することで各種業界団体が財務省に擦り寄ってきて、「うちの業界の税率は特別に下げてください」と言ってくるので、そこで「じゃあ天下り先用意しといて」と取引を持ちかけたいから。景気が良くなって同じ税率で税収が増えても官僚にとって利益はない。
  • 官僚が学者を取り込むのは簡単。経済学者の場合、ノーベル賞受賞者にあわせてやったり、飛行機で「たまたま席があいてるんですが」とか言ってファーストクラスに乗せてやればコロリといく。
  • 官僚が学者の論文を書いてやっている。名義だけ学者が書く。
  • 震災増税を支持する学者は、官僚のポイントを稼いで立派な肩書きのポストを欲しがっているのではないか。彼らが普段教えているバローの課税平準化理論と矛盾してしまっている。
  • 日銀の白◯総裁ははっきりいってそこまで頭が良くない。
  • 日銀の◯川総裁は上司に付き従うのはうまかったけど総裁になるような人じゃない。本人もなれると思ってなかった。
  • 日銀は職員の家柄とかにもこだわっていたらしい。
  • 与謝野大臣は与謝野晶子の色紙のコピーを記者に配ってる。
  • 震災の二日後に菅総理に増税を申し入れた谷垣氏はヒドすぎ。

まだまだ過激な話がありますが、それは動画の方で。上念さんが「官僚はずいぶんお金を欲しがっているけれど、家が貧乏なんですか?」と言っていて、たぶんココが一般の国民が最も疑問に思うところでしょう。貧乏なわけはないから、きっと官僚の天下りはお金ではなくて何か別の理由があるんだろう、と考えたりするわけです。この疑問に対しては田中さんが「官僚同士、学歴では差が付かない。差が付くのは天下り先とかお金とかイケメンだとかそういう部分になってるんですよ」と答えてました。なるほど。にんげんっていいな。

官僚の天下りが問題になると、「日本の役人はマシな方。賄賂をもらわないし」みたいな話がだいたい出てきますが、どうでしょうね。事実上税金を使い込んでるんですからあんまり自慢にはならないと思いますし、組織的に効率良く使い込んでるので、金額面でもマシな方と言い切れるかどうか。こういう、特に直接の利害関係があるわけでもないのに官僚の肩を持ったりする人々についてのお話もありました。

学者の寂しい生活の中に官僚が入り込んで操ってしまうその手管たるや、学者の皆さんには失礼ながら、爆笑せずにはいられませんでした。まあカワイイですよね、ある意味。

さて、官僚と学者さんは小さな社会でなにやら楽しげですが、では現状は打開できるんでしょうか?

田中さん「高橋さんからみてガチンコでデフレ脱却を訴えている議員って何人くらいいますか?」
高橋さん「二桁いないね。でも政策ってそんなもん」
上念さん「逆に言えばガチンコで増税を言っている人も少ないんですよね」
高橋さん「そうです。議員の6割くらいは状況次第で動きます。だから昔に比べればいい勝負できるようになってる。デフレに疑問を持つ人が増えているのは事実ですよ。だからちょっと風が吹けばリフレ政策が実現する可能性は出てきてます」

で、戦術としてはデフレよりも円高によるダメージを全面に押し出すべきで、今後は民主党の代表選で候補者が明言するかどうかに注目、とのこと。

この動画を見て改めて思うんですが、官僚の人だって定年を迎えてすぐポックリ逝くつもりなんて無いでしょうから、引退後まあ20年くらいは生きようと考えてるんだと思います。で、20年もあったら反省とかしちゃう日も一日くらいはあると思うんですよね。現役のときは同類の人たちと一緒に「オレたち悪くないよね」と確認し合ってればいいんでしょうけど、引退したらさすがにそうはいかないだろうからちょっと心配です。それとも深く考えなければ過去の行いなんて気にせずに生きていけるんでしょうか。例えば日銀の白川○裁がテレビに出て「物価が下がっててびっくりした」的な発言で庶民人気を取ろうとして、ある意味大当たりしたこととか忘れられるんでしょうか。元々頭のいい人たちですから、それはちょっと信じられないですね。まあ余計なお世話ですけど。

田中さんによると次回は9月頃にあるそうなので、楽しみです。

動画はパート2まであります。


【Live Wire #25】震災増税2011、日本は二度死ぬ ! 1
http://www.ustream.tv/recorded/16189049



【Live Wire #25】震災増税2011、日本は二度死ぬ ! 2
http://www.ustream.tv/recorded/16191654