- 07:15 書きました。 今日のTwitter Mon, Sep 28 http://bit.ly/LOVto
- 09:34 英語のつぶやきは効率よくないないな。ちょっと書いたら終わりじゃん。日常的な会話にかなり近い言葉遣いでつぶやかなきゃだめなんだろう。僕が一番苦手な英語だ。
- 09:39 つかDMは140文字じゃなくてもいいのに。
- 09:40 世話人っぽい雰囲気の人がニガテ。
- 10:55 .@kdmytk 河合幹雄さんの『安全神話崩壊のパラドックス』という本で説明がありました。普段一般人に交われない「ケガレ」を負わされた人たちも、祭りには一般人とともに参加できる。ハレの日にはケの日常にあるコミュニティの境界が取り払われる。という話でした。
- 10:56 .@kdmytk ただ参加の仕方には制限があって、それが出店とか、ある種の暴力的な儀式っぽい行事とかに限られる、とも。
- 11:02 そうだ、昨日からカレーが食べたかったんだ。昼前に思い出した我が胃袋、さすがだぜ。
- 11:04 失業率がなあ…。RT @fu4: これは大変 RT @akhk: うーん。。将来、自殺をゼロにするための活動をしたい。 自殺者1〜8月まで2万2000人最悪ペース - 社会ニュース : nikkansports.com http://bit.ly/3bifd
- 11:08 @kdmytk あの本、すごく高いんで(3,500円!)気をつけてくださいね。僕は図書館で借りました。でもいい本です。 [in reply to kdmytk]
- 11:10 昨日は新宿で青葉のラーメン食べた。ちょっとしょっぱかったな。今日は絶対にカレー。絶対に。
- 16:43 セブンイレブンで売ってる「薄焼きチーズビスケット」がおいしい。ちょっと甘いのがすごくいい。
- 19:03 御輿は軽いほうが良い、というのは日本だけではないんだなあ RT @marketingheaven: A leader is best when people barely know he exists, when his work is done, his aim fulfil…
2009年9月30日水曜日
今日のTwitter Tue, Sep 29
2009年9月29日火曜日
今日のTwitter Mon, Sep 28
2009年9月27日日曜日
複雑さの理由・書評・三木義一『日本の税金』
税金の仕組みはとても複雑だからシンプルにするべきだ。僕にもそう思っていた時期がありました。というか今回紹介する本を読むまでそう思ってた。税についてあんまり知らないよなーということで読んだ本、三木義一著『日本の税金』(岩波新書刊)だ。とても良い本だったけど、2003年の本であるので、2009年現在の税制とは違うところもあるのかもしれない。
この本は節税とかそういった目的のために書かれているわけでもなく、詳しい納税の仕方が載っているわけでもない。日本に住んでいれば納めなければならない各種の税の目的や理念、そしてそれらからは幾分かけ離れてしまった現状を解説した本だ。なので、教養としての税、がテーマと言っていいかもしれない。税の種類別に解説されていて、所得税、法人税、消費税、相続税、間接税等、そして地方税の順となる。一番複雑で難しいのはやっぱり所得税と法人税なので、残念だけど本書のとっつきはちょっと悪い。
で、なぜ所得税や法人税は複雑になってしまうのかというと、公平性を確保するためだ。累進課税という言葉は大抵の人が知っている言葉だけど、僕を含め多くの人は、「所得が一定以上になると、税率が上がる」と単純に考えているんじゃないだろうか。しかしこのようなやり方(単純累進税率)では公平な負担にはならない。
なので、現実には超過累進税率が採用されている。これは上記の例で言えば、901万円の所得に対して、900万までは20%、900万を超えた残りの1万には30%の税率がかけられることになる(もちろん900万以下が一律20%ではない。簡便のため省略した)。こうすると納税額の直感的な理解が難しくなるが、働き損は避けられるというわけだ。
と、これだけならまあいいんだけど、実際には各種控除が様々に関わってくるので、さらに複雑になってしまう。それでも、本書を読んで感心したのは、この様々な控除というのが、それなりに合理的にできているんだなということ。基礎控除というのは、人が生きていくために必要な所得には課税してはいけない、という考えから導入されているもので、まったく理にかなっているな、と思う。ただ、その金額が38万円というのはいくらなんでもヒドい。そして配偶者控除も、家族内で家事や子育てを担当している人が生きていくための所得に課税するのはおかしい、という考え方がそもそもの理念だ。女性の社会的な立場の弱さと合わさった議論になりがちだが、控除の考え方自体は正しいと思う。誰かがやらなきゃいけない事をして、そのために就業の機会がなくなってしまうわけだから、その人が使うお金に税金をかけちゃいかんだろう。
しかし、配偶者控除はいわゆる「103万円の壁」という問題を作り出した。これはこの控除の対象者(主に主婦)の所得が103万円を超えると、夫の所得の配偶者控除がなくなってしまい、妻が働く前よりも税負担が重くなってしまう、という問題だった。つまり女性が働くのを社会が邪魔しているようなことになってしまったわけだ。が、これは1987年の法改正で改善されている。今は控除の額が所得にあわせて減額していくようになっていて、以前のように一線を越えればすべてパァという状況ではない。にもかかわらず、世の中にはまだ「103万円の壁」があるという。その原因は、夫の勤めている会社の配偶者手当である。配偶者手当の条件を、かつての税法にあわせたままの103万円に設定しているから、未だに103万円以上の所得にならないような働き方をせざるを得ない女性たちがいる。これは各労働組合の怠慢と言っていいだろう。
ではそれ以外の現行の税制がうまくいっているのかというと、そんなことは全くない。多くが時代とずれまくっている。相続税などはその典型で、本来は相続した額で税率を決めれば話が早いし、そうしている国も少なくない。しかし日本ではそうではない。なぜか。それは戦後の復興期の話。
なので、相続した金額だけじゃなくて、遺産全体の金額も考慮に入れた複雑な課税方式が採用された。だから同じ金額を相続してもかかる税金は違う、というよく分からない事態を多数生み出している。この、過去の特殊な時期を反映した制度のおかげで現在に混乱が生まれる、というパターンが税の話には多いようだ。酒税もそんな感じ。
酒税の場合、アルコール度数に応じて、1キロリットルあたり何%という課税方式が合理的であると考えられるが、日本の場合はやっぱりそうなってはいない。日本の場合、お酒を10種類に分け、課税する。なので同じアルコール度数でも分類が違えば税率も違うことになる。
これは大衆酒には低い税率、高級酒には高い税率を、ということで導入されたわけで、それはまあいいんじゃない? と思う。が、なぜかビールの税負担割合は35.8%で、ウイスキーの14.8%よりもずいぶん高い。というか一番高い。ビールは高級酒の中でも選ばれた高級酒というわけだ。税制上は。
つまり今や酒税は、合理的でもないし、当初の理念からも大きく外れてしまっている。そこで「ビールとして課税されないビール」、つまり発泡酒が登場してくる。酒税上のお酒の分類はかなり問題だらけで、酒税上のビールの定義は「麦芽、ホップ、水を原料として発酵させたもの」だそうだ。さらに副原料の規定があるのだが、要するに、「副原料を使ってもいいが、麦芽の量の半分(麦芽比率三分の二)まで」[p.153]というのが税制上のビールだった。では麦芽の量の半分以上の副原料を使ったらどうなるかというと、それは酒税法上はビールではなくなり、雑酒になる。となれば、税金が低くなり、価格も安くなるわけだ。
ここで財務省がビールを大衆酒と認めれば話は早かったんだけど、発泡酒もビールだ、という法改正をしちゃった。すると、今度は副原料をさらに増やした雑酒が登場。それもビールだ、と財務省。さらに副原料を増やした雑酒登場。こういう具合に「愚かな改正を繰り返し、そのあげくますますビールとは異質な発泡酒の量を増やしているのである。」[p,154]
とまあ時代遅れの乗り物をなんとか修理して使ってたら、いつの間にかグロテスクな何かになっちゃった、というのが現在の税制の姿であるようだ。で、そもそもこの本を手に取ったのは、消費税のことが知りたいからだった。聞くところによるとえらく問題があるらしいから。で読んでみて、結局、僕には要約は無理だな、と認めるしかないくらいには複雑だったので、是非本書を読んでみて欲しい。しかし複雑さの他にも、消費税が持つ本来的な欠陥もまったく補われていなかったりもする。それは低所得者のほうがより重く負担しているという逆進性の問題である。
つまり消費税は、シンプルでもなければ、公平でもない税であるというわけだ。消費税導入時は高齢者にも一定の負担を求める、という理由もあったそうだが、それに対して著者は次のように疑問を提示する。( )は原文ママですよ。
経済学者の飯田泰之氏が雨宮処凛氏との共著『脱貧困の経済学』の中で、「富裕層に対する減税ばかりしているのだから財政危機になるのは当然だ」という趣旨の発言をしている。そこで本書『日本の税金』を読んで思うのは、行き当たりばったりの法改正を繰り返し、税の公平さを歪めてしまっている上、さらには税収まで落ちてしまったのだな、ということだ。また、同時に反省もしたのだけど、僕は税の理念だとか、考え方だとか、全く知らなかったな、とも思った。現在の税制は、理念はなかなか立派だと感じるところもあって驚いたんだけど、僕も含めて、どれだけの人がそれを知っているだろう? 本書はその理念というか、税についてどう考えればいいのか、詳しく説明している。複雑な税の仕組みを理解したい、という方は専門書にあたって欲しいけども、そうではなくて、税の勘所を押さえたい、という人にはぴったりだと思う。もしかしたら現行の制度とは変わっている点もあるだろうということを考慮に入れつつ、読んでみてください。ちょっと難しい本だけども。
ああそうそう、僕は納税者番号についても何かあるかなと期待していたんだけど、残念ながら詳しい言及は本書にはない。本書はとても有意義な本だと思うので、是非新しい状況を反映させた改訂版を出して欲しいし、その中には納税者番号についての解説もあるとナイスですよ。
日本の税金 三木義一 |
で、なぜ所得税や法人税は複雑になってしまうのかというと、公平性を確保するためだ。累進課税という言葉は大抵の人が知っている言葉だけど、僕を含め多くの人は、「所得が一定以上になると、税率が上がる」と単純に考えているんじゃないだろうか。しかしこのようなやり方(単純累進税率)では公平な負担にはならない。
しかし、単純累進税率には重大な欠陥が含まれているのである。仮にある納税者の課税総所得金額が12月30日現在900万円であり、翌日働けば901万円になるとしよう。900万にしておけば税率は20%なので180万円の所得税を差し引いた720万円を手に入れることになるが、1万円でも多く稼ぐと901万円となり30%の税率が適用されるために、270万3000円の所得税を差し引いた630万7000円に減ってしまうのである。
(漢数字をアラビア数字に変えた。)[p.42]
なので、現実には超過累進税率が採用されている。これは上記の例で言えば、901万円の所得に対して、900万までは20%、900万を超えた残りの1万には30%の税率がかけられることになる(もちろん900万以下が一律20%ではない。簡便のため省略した)。こうすると納税額の直感的な理解が難しくなるが、働き損は避けられるというわけだ。
と、これだけならまあいいんだけど、実際には各種控除が様々に関わってくるので、さらに複雑になってしまう。それでも、本書を読んで感心したのは、この様々な控除というのが、それなりに合理的にできているんだなということ。基礎控除というのは、人が生きていくために必要な所得には課税してはいけない、という考えから導入されているもので、まったく理にかなっているな、と思う。ただ、その金額が38万円というのはいくらなんでもヒドい。そして配偶者控除も、家族内で家事や子育てを担当している人が生きていくための所得に課税するのはおかしい、という考え方がそもそもの理念だ。女性の社会的な立場の弱さと合わさった議論になりがちだが、控除の考え方自体は正しいと思う。誰かがやらなきゃいけない事をして、そのために就業の機会がなくなってしまうわけだから、その人が使うお金に税金をかけちゃいかんだろう。
しかし、配偶者控除はいわゆる「103万円の壁」という問題を作り出した。これはこの控除の対象者(主に主婦)の所得が103万円を超えると、夫の所得の配偶者控除がなくなってしまい、妻が働く前よりも税負担が重くなってしまう、という問題だった。つまり女性が働くのを社会が邪魔しているようなことになってしまったわけだ。が、これは1987年の法改正で改善されている。今は控除の額が所得にあわせて減額していくようになっていて、以前のように一線を越えればすべてパァという状況ではない。にもかかわらず、世の中にはまだ「103万円の壁」があるという。その原因は、夫の勤めている会社の配偶者手当である。配偶者手当の条件を、かつての税法にあわせたままの103万円に設定しているから、未だに103万円以上の所得にならないような働き方をせざるを得ない女性たちがいる。これは各労働組合の怠慢と言っていいだろう。
ではそれ以外の現行の税制がうまくいっているのかというと、そんなことは全くない。多くが時代とずれまくっている。相続税などはその典型で、本来は相続した額で税率を決めれば話が早いし、そうしている国も少なくない。しかし日本ではそうではない。なぜか。それは戦後の復興期の話。
しかし、現実の日本はまだこのような制度(相続した額によって税率を決める制度:引用者)を受け入れられる状態ではなかった。とくに農家の相続では、農業経営を維持していくためには長男に単独相続させることが必要であったが、そうすると税負担が重くなる。税負担を逃れるために、平等に分割したように仮装することも横行した。税務行政もそうした分割の実態を適正に調査できる状態にはなかった。
[p.119]
なので、相続した金額だけじゃなくて、遺産全体の金額も考慮に入れた複雑な課税方式が採用された。だから同じ金額を相続してもかかる税金は違う、というよく分からない事態を多数生み出している。この、過去の特殊な時期を反映した制度のおかげで現在に混乱が生まれる、というパターンが税の話には多いようだ。酒税もそんな感じ。
酒税の場合、アルコール度数に応じて、1キロリットルあたり何%という課税方式が合理的であると考えられるが、日本の場合はやっぱりそうなってはいない。日本の場合、お酒を10種類に分け、課税する。なので同じアルコール度数でも分類が違えば税率も違うことになる。
これは大衆酒には低い税率、高級酒には高い税率を、ということで導入されたわけで、それはまあいいんじゃない? と思う。が、なぜかビールの税負担割合は35.8%で、ウイスキーの14.8%よりもずいぶん高い。というか一番高い。ビールは高級酒の中でも選ばれた高級酒というわけだ。税制上は。
つまり今や酒税は、合理的でもないし、当初の理念からも大きく外れてしまっている。そこで「ビールとして課税されないビール」、つまり発泡酒が登場してくる。酒税上のお酒の分類はかなり問題だらけで、酒税上のビールの定義は「麦芽、ホップ、水を原料として発酵させたもの」だそうだ。さらに副原料の規定があるのだが、要するに、「副原料を使ってもいいが、麦芽の量の半分(麦芽比率三分の二)まで」[p.153]というのが税制上のビールだった。では麦芽の量の半分以上の副原料を使ったらどうなるかというと、それは酒税法上はビールではなくなり、雑酒になる。となれば、税金が低くなり、価格も安くなるわけだ。
ここで財務省がビールを大衆酒と認めれば話は早かったんだけど、発泡酒もビールだ、という法改正をしちゃった。すると、今度は副原料をさらに増やした雑酒が登場。それもビールだ、と財務省。さらに副原料を増やした雑酒登場。こういう具合に「愚かな改正を繰り返し、そのあげくますますビールとは異質な発泡酒の量を増やしているのである。」[p,154]
とまあ時代遅れの乗り物をなんとか修理して使ってたら、いつの間にかグロテスクな何かになっちゃった、というのが現在の税制の姿であるようだ。で、そもそもこの本を手に取ったのは、消費税のことが知りたいからだった。聞くところによるとえらく問題があるらしいから。で読んでみて、結局、僕には要約は無理だな、と認めるしかないくらいには複雑だったので、是非本書を読んでみて欲しい。しかし複雑さの他にも、消費税が持つ本来的な欠陥もまったく補われていなかったりもする。それは低所得者のほうがより重く負担しているという逆進性の問題である。
実収入に対する消費税の負担割合は、一番収入の低い層の2.7%から、一番高い層への2.0%へと徐々に下がっていっているのである(財務省「収入階級別税負担平成11年分)
(漢数字をアラビア数字に変えた。)[p.104]
つまり消費税は、シンプルでもなければ、公平でもない税であるというわけだ。消費税導入時は高齢者にも一定の負担を求める、という理由もあったそうだが、それに対して著者は次のように疑問を提示する。( )は原文ママですよ。
しかし、高齢者は若者世代に比して、資産は相当多く所有し、所得も決して少なくない。若者世代と決定的に違うのは、若者世代には資産格差も所得格差もそれほどなく(皆ほどほどに貧しい)、これに対して高齢者世代では資産格差や所得格差が著しい点なのである。このように資産格差や所得格差が著しい世代が増えていく社会に、一律に負担をかする消費税がはたして本当に適切なのかは疑問が残る。
[p.114]
脱貧困の経済学 飯田泰之・雨宮処凛 |
ああそうそう、僕は納税者番号についても何かあるかなと期待していたんだけど、残念ながら詳しい言及は本書にはない。本書はとても有意義な本だと思うので、是非新しい状況を反映させた改訂版を出して欲しいし、その中には納税者番号についての解説もあるとナイスですよ。
今日のTwitter Sat, Sep 26
- 06:27 昨日は暑くてうまく寝付けなかったけど、寝起きはさわやか。
- 06:33 なんだろう? この総花感に対する自分の警戒心は。RT @hatebu: 読書猿Classic 一人で読めて大抵のことは載っている教科書http://bit.ly/14i1pB
- 06:43 今読んでいる本に"a moonlighting chiropractor"という言葉が出てきた。何かエキゾチックな絵が浮かんだんだけど、副業を持っている整体師さんのことですね。
- 07:42 早速使ってみた。こ、これは! 使いやすいぞ! 使いやすいぞ! ギャップレスで既読にできるのがいい!RT @himanainu_kawai: Feedly デザインがいけてるな http://bit.ly/3IUCMi
- 10:05 リンク先で紹介されている本を注文した。しっかしコメント欄酷いな。ほとんど何を言っているのか分からない。極東ブログ:[書評]データで斬る世界不況http://bit.ly/5y3Ci
- 10:09 feedlyめんこいなあ。RSSリーダーとtwitterの連携がまぶしすぎる。まだ上手く表現し切れていない感じだけど、とってもまぶしいよfeedly。http://www.feedly.com/
- 11:02 涼しくなれば読書もはかどるだろうと本を買う日々が続く。
- 11:14 金融の人ってさ…、いや一部だとは思うけどね。 徒然なる数学な日々 at FC2 | 円安になる!だって、日本経済の実態は著しく悪化しているから(失笑) http://bit.ly/4FtYsi (via feedly)
- 16:47 帰宅。部屋あつ〜
- 16:51 うわお。feedlyが落ちてる。http://bit.ly/H2dIy
- 19:48 うーん。ほとんどの人は読む機会>書く機会>話す機会なんだから読むようになれたほうが御利益が多いんじゃないの? 僕も読むばっかりだな。RT @hatebu: 日本に居ながら、ナマの英語に触れる工夫 - 化学者のつぶやき http://bit.ly/18tuzn
- 19:49 読むようになれるってなんだ? 読めるようになれたほうが、でした。
2009年9月26日土曜日
今日のTwitter Fri, Sep 25
- 08:03 なんか変な夢をみたんだよなーと考えてたら思い出した。DSiが10,000円に値下げ!という夢だった。どんだけ欲しいんだ俺。
- 08:29 今年こそはコートを買わなきゃいけないんだけど、タイミングが悩ましい。昨シーズンの終わりに買っときゃよかった。
- 09:45 @yonda4 日本の税金 三木義一 ホント日本企業の家族手当は社会を混乱させてしまっている。家族手当に相当する金額を国が支給するべき。で、企業からは税金をとる。そうしないと会社守って国民守らずになってしまう。それに非正規雇用へのシフトの原因の一つでもあるよね>家族手当
- 09:52 いわゆる「103万の壁」は税制上は20年前に改善されてもう存在していないのに、企業の家族手当はいまだに103万円が基準になっている。
- 10:08 今週末フォロー増やそう。たぶん。
- 10:12 もうちょっと涼しくなれば、と思うようになって半月くらい。いつだ? いつ涼しくなるんだ?
2009年9月25日金曜日
もうドキドキしない・書評・伊勢田哲治『哲学思考トレーニング』
なんか続けてたのがあったような気がするけど、キニシナイ。
前回のエントリーで飯田泰之先生が紹介していた伊勢田哲治著、『哲学思考トレーニング』を読んでみた。読んでみたらこれがスゴイ本で、なんか僕の関心というか気がかりなことにドンピシャなものだった。この本が新書で買えるというのはとんでもないことなんじゃないだろうか。
飯田先生は、本書はタイトルで損をしていると言っていて、それには同感。でも一方で、本書はタイトル通りの本でもあると思う。本書冒頭に、哲学を学ぶと、全体的な状況をとらえて分析する能力が身につく、という話がでてくる。この本ではその能力を活かしたスキルをクリティカルシンキングと呼び、クリティカルシンキングとは「ある意見を鵜呑みにせずによく吟味すること」[p.11]である。「よく吟味する」というのはちょっと曖昧な表現なんだけど、それは、この本で読者がトレーニングするのは、曖昧さだらけの日常の中で全体的な状況を捉えて分析する力だからだ。たとえばネット上で、よく分からない専門用語とか外国の学者の名前が出てくる文章に丸め込まれた経験はないだろうか。僕はしょっちゅうだ。日常に出会う議論は、教科書や論文に載っているものと違って、かなり曖昧さを含んでいる。用語の使い方が正しいのか、そのフランス人はホントに権威ある学者なのか、僕たち素人には分からない。しかしだからといって、全面的に受け入れたり拒否したりせずに、ある程度でいいので妥当性を評価できれば、いい加減な話に踊らされることもなく、本当に大事なことを見失わずにすむだろう。さらにチェックが増えれば、世の中、建設的な議論もぐっと増えちゃったりするんじゃないかな。で、そのための道具がクリティカルシンキングであるわけだ。
あらゆることについて素人である僕としては、専門家やそれっぽい肩書きの人が、「AはBであるから、政府はCという政策を実行すべき」とか「DとEは全くの無関係であり、F氏の主張は言いがかりも同然である」とか言われると、その真偽を確かめるだけの知識がないので、よく分からんがきっとそうなんだろう、ともやもやを抱えつつも説得されてしまうことが多い。もやもやしつつも、結果的には鵜呑みにしているといえる。僕は経済学に興味があるから、経済学っぽい話にはずいぶん振り回された(されてる)。今ではあまりにいい加減な経済学っぽい話は相手にしないようになったけど、以前は国際競争力っぽい話とかにはいちいち必死になって反論を考えていた。元の話がいい加減なんだから、そこで必死に考えたって何にも出てこない。おとなしく教科書開いて比較優位について勉強するべきだった、と今なら思う。
で、本書はその手のいい加減な話から身を守るための道具をたくさん提供してくれる。しかも読んだその日から使える即効性がうれしい。リアルにもネットにもいい加減な議論の種はつきない。そのいちいちにドキドキしたりしてたらきりがないし、結構時間もとられるし、たぶん友達もなくすだろう。私見だが、その手のいい加減な話というのは、妙に脅迫的なところがある。誰が悪いとか、誰が利益を独占しているとか、誰が法をかいくぐっているとか。俺の意見に賛成しないやつは…、と迫られている雰囲気がある。こんな議論に巻き込まれたら、そりゃ友達なくすでしょ? ちょっと脱線するけど、そういうのって急いで言質を取ろうとしているようで(そして言質を取れば何とかなるとでも思っているかのようで)、何かコンプレックスでもあるのかな、と思ってしまう。まあ余計なお世話ですが。
本書のテクニックでもっとも使い勝手がいいのは、誤った二分法というものだ。引用しよう。強調は原文のまま。
これはもう今すぐ使えるテクニックだ。誤った二分法を念頭に置いて、最近読んだもやもや文章を読み返してみてはどうだろう。仮に結論が自分にとって好ましいものでも、こういうやり方で説得されるわけにはいかない、と自信をもって言えるようになっているはずだ。
ほかにも様々な吟味の仕方が記されている。中には多くの手順がいるテクニックもあるが、ネットにあふれる、妙な迫力はあるが怪しげな議論を退けるだけなら、誤った二分法をはじめ、比較的簡単なテクだけで事足りるだろう。これはいい! と思ったのは、反証可能性と立証責任だ。どちらもネットではよく目にする言葉だけど、本書ではその日常での使い方を解説している。これらを杓子定規に使ってしまえば全否定となってしまって、結局鵜呑みにしたときと同様、もやもやだけが残るんだと痛感した。反証可能性は強力すぎるので使用するかどうか、よく注意する。そして立証責任は必ずしも「ある」と主張する側にある訳じゃない。大抵の場合、立証が容易である側がすべきであろう。と、こういうふうに曖昧さを許容しつつ、ケースバイケースで対応して、安易に結論に飛びつかない、それが本書を貫く主張だ。つまり、万能な議論の進め方は存在しないのであって、なにやら難しげな言葉を使って断言しているお話には要注意だ。
僕は本書を半分くらい読んだところで、もう一度読みたい、と思うようになった。その頃にははじめのほうを忘れはじめてたから。で、とりあえず一回読んだんだけど、「あとがき」ならぬ「「結局、何がどうだったの?」という人のためのガイド」の中で、二度目に読むときの順序が書いてあって、ホントかゆいところに手の届く本なのです。しかも参考文献が著者の解説付きで載っているので、これもうれしい。英語の本も多いが、英語の本を読むのが趣味の僕には本当にありがたい。自分で探して出会う可能性のほとんどない本だろうから、特にそう思う。
本書は手元に置いておく価値のある本だ。何かもやもやする議論に出会ったとき、この本を片手に検証していくと、それが不誠実な議論であることがよく分かるだろう。そして世のいい大人たちがいかにいい加減な議論をしているのか、ということもよく分かってしまうだろう。それでも彼らが何かいっぱしのことを言っているように見えるのは、普段から偉そうに振る舞うなどして努力してるからだ、ということも、知りたくもないけど、分かってしまうだろう。さらに、自分が調子に乗って不誠実な議論をしてきたことも思い出すだろう。だからこそこの本は、難しげな用語や肩書きに弱い僕のような人にとって必携だ。
前回のエントリーで飯田泰之先生が紹介していた伊勢田哲治著、『哲学思考トレーニング』を読んでみた。読んでみたらこれがスゴイ本で、なんか僕の関心というか気がかりなことにドンピシャなものだった。この本が新書で買えるというのはとんでもないことなんじゃないだろうか。
哲学思考トレーニング 伊勢田哲治 |
あらゆることについて素人である僕としては、専門家やそれっぽい肩書きの人が、「AはBであるから、政府はCという政策を実行すべき」とか「DとEは全くの無関係であり、F氏の主張は言いがかりも同然である」とか言われると、その真偽を確かめるだけの知識がないので、よく分からんがきっとそうなんだろう、ともやもやを抱えつつも説得されてしまうことが多い。もやもやしつつも、結果的には鵜呑みにしているといえる。僕は経済学に興味があるから、経済学っぽい話にはずいぶん振り回された(されてる)。今ではあまりにいい加減な経済学っぽい話は相手にしないようになったけど、以前は国際競争力っぽい話とかにはいちいち必死になって反論を考えていた。元の話がいい加減なんだから、そこで必死に考えたって何にも出てこない。おとなしく教科書開いて比較優位について勉強するべきだった、と今なら思う。
で、本書はその手のいい加減な話から身を守るための道具をたくさん提供してくれる。しかも読んだその日から使える即効性がうれしい。リアルにもネットにもいい加減な議論の種はつきない。そのいちいちにドキドキしたりしてたらきりがないし、結構時間もとられるし、たぶん友達もなくすだろう。私見だが、その手のいい加減な話というのは、妙に脅迫的なところがある。誰が悪いとか、誰が利益を独占しているとか、誰が法をかいくぐっているとか。俺の意見に賛成しないやつは…、と迫られている雰囲気がある。こんな議論に巻き込まれたら、そりゃ友達なくすでしょ? ちょっと脱線するけど、そういうのって急いで言質を取ろうとしているようで(そして言質を取れば何とかなるとでも思っているかのようで)、何かコンプレックスでもあるのかな、と思ってしまう。まあ余計なお世話ですが。
本書のテクニックでもっとも使い勝手がいいのは、誤った二分法というものだ。引用しよう。強調は原文のまま。
ちなみに、クリティカルシンキングの議論のテクニックの一つとして「誤った二分法」(false dichotomy)を避ける、というものがある。誤った二分法とは、複雑な状況をAかBかというかたちで単純化して、AではないからBだ、と結論する過ちである。人間をすべて敵と味方に二分して、「お前は味方ではないから敵だ」というような判断をするのはこれにあたる。こういう過ちについて知っておくと、相手の議論につい説得されそうになったときに「まてよ」といって考えなおすのに役に立つ。
[p.136]
これはもう今すぐ使えるテクニックだ。誤った二分法を念頭に置いて、最近読んだもやもや文章を読み返してみてはどうだろう。仮に結論が自分にとって好ましいものでも、こういうやり方で説得されるわけにはいかない、と自信をもって言えるようになっているはずだ。
ほかにも様々な吟味の仕方が記されている。中には多くの手順がいるテクニックもあるが、ネットにあふれる、妙な迫力はあるが怪しげな議論を退けるだけなら、誤った二分法をはじめ、比較的簡単なテクだけで事足りるだろう。これはいい! と思ったのは、反証可能性と立証責任だ。どちらもネットではよく目にする言葉だけど、本書ではその日常での使い方を解説している。これらを杓子定規に使ってしまえば全否定となってしまって、結局鵜呑みにしたときと同様、もやもやだけが残るんだと痛感した。反証可能性は強力すぎるので使用するかどうか、よく注意する。そして立証責任は必ずしも「ある」と主張する側にある訳じゃない。大抵の場合、立証が容易である側がすべきであろう。と、こういうふうに曖昧さを許容しつつ、ケースバイケースで対応して、安易に結論に飛びつかない、それが本書を貫く主張だ。つまり、万能な議論の進め方は存在しないのであって、なにやら難しげな言葉を使って断言しているお話には要注意だ。
僕は本書を半分くらい読んだところで、もう一度読みたい、と思うようになった。その頃にははじめのほうを忘れはじめてたから。で、とりあえず一回読んだんだけど、「あとがき」ならぬ「「結局、何がどうだったの?」という人のためのガイド」の中で、二度目に読むときの順序が書いてあって、ホントかゆいところに手の届く本なのです。しかも参考文献が著者の解説付きで載っているので、これもうれしい。英語の本も多いが、英語の本を読むのが趣味の僕には本当にありがたい。自分で探して出会う可能性のほとんどない本だろうから、特にそう思う。
本書は手元に置いておく価値のある本だ。何かもやもやする議論に出会ったとき、この本を片手に検証していくと、それが不誠実な議論であることがよく分かるだろう。そして世のいい大人たちがいかにいい加減な議論をしているのか、ということもよく分かってしまうだろう。それでも彼らが何かいっぱしのことを言っているように見えるのは、普段から偉そうに振る舞うなどして努力してるからだ、ということも、知りたくもないけど、分かってしまうだろう。さらに、自分が調子に乗って不誠実な議論をしてきたことも思い出すだろう。だからこそこの本は、難しげな用語や肩書きに弱い僕のような人にとって必携だ。
2009年9月24日木曜日
今日のTwitter Wed, Sep 23
- 03:47 書きました。 今日のTwitter Tue, Sep 22 http://bit.ly/LRrVo
- 09:59 お昼食べた。デザートはガツみか。ガツンとみかん。
- 10:45 なんか暑いよね。
- 11:06 ああそうそう、資本ってお金のことじゃないんだよ。経済学を勉強したかどうか、本人が一番よく知っているはず。大人の知ったかぶり発言が、なんかの偶然で注目されたり一部で同意を得たりすることほど辛いものはない。自戒を込めて、知らないことは知らないと言おう。
- 11:17 しかしこれひどいな。官僚のいいなりかよ、産経新聞。情けなさ過ぎる。http://bit.ly/DvP6r
- 17:25 @yoshikoskz ホント暑い一日でした。鈴虫がんばれ。 [in reply to yoshikoskz]
- 17:26 今日はカルディでシメイの青いやつを買ってきた!
- 17:30 スポーツシューズって一万円こえるかこえないかで強度にえらい差がある気がする。
- 19:35 ブログ更新: 統計の数字で丸め込まれそうになったら http://bit.ly/5SAD6
2009年9月23日水曜日
今日のTwitter Tue, Sep 22
- 03:49 書きました。 今日のTwitter Mon, Sep 21 http://bit.ly/32MdpT
- 06:03 普通は趣味の悪いものには言及しない、とfinalventさんが書いてた。すごくイライラしてたけど、なんか溜飲が下がってしまった。なんでイライラしてたかというと"discouraged unemployment"って知ってる? と言ってやろうかどうか迷ってたから。言わなくて正解。
- 06:21 経済現象を観察するには人の一生は短すぎる、という思いを新たにする。とくに10年にも満たないような統計データを切り出してきて何かを言うのは、本当に危険だと思うから。
- 06:33 もうちょっと気温がさがれば僕の部屋もついに 発酵食品のターン!
- 07:35 本買いに行くかな。
- 12:57 帰宅。意外と人では少なかったかな?
- 12:59 しっかしあんなぐだぐだな理屈によくみんな釣られるねえ。貧困問題で誰かコンドラチェフの波の話をする人がいるわけ? 用語の使い方と数値の扱いでお里が知れますわよ。
- 13:01 あとフツーに考えて景気と自殺といったら、失業率なんじゃないの? 企業収益と比べたから何なのさ?
- 13:28 @yonda4 哲学的思考トレーニング 伊勢田哲治 これは良いものだ! タイトルがアレ
- 13:28 しまった途中で送っちゃったよ。
- 13:32 伊勢田哲治 『哲学的思考トレーニング』 素晴らしい本ですよ。ネットにもリアルにもあふれる強引な理屈から身を守るテクニックが満載。上手く言えないけど何か違う、と感じたときに押し切られることなくうっちゃりをかませられるようになる。というかなりたい。
- 13:34 やっぱり「馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない」ですよ。難しい言葉で攻められても「よくわかりません」と逃げてしまおう。
- 19:35 ブログ更新: 妙な迫力で説得されそうになったら http://bit.ly/Md4JT
2009年9月22日火曜日
今日のTwitter Mon, Sep 21
- 03:07 書きました。 今日のTwitter Sun, Sep 20 http://bit.ly/Gwnvq
- 08:00 専門用語を不必要にかつ不正確に使い、外国の学者さんの名前なんぞを引っ張ってくると、それだけでかなり頭良さげな文章にはなる。自分もなんども繰り返してきた過ちなんだけど、他人がやってると結構いらつく。なんて身勝手なんだ俺!
- 08:06 頭良さそうなだけの文章や言葉はどこか脅迫の雰囲気がある。評価に対する不安があるのかもしれない。でも脅迫の雰囲気があるので、自分は結構びびってしまう。
- 09:36 お昼はこれにした。うめー!RT @mayumiura: 今夜は「ウマすぎるから揚げ」にした。http://k3u6w.tk
- 15:24 30過ぎて子供の頃自分の身の回りにいた大人たちの言動を思い返してみると、あいつら全然大人じゃないな、と気づく。
- 19:37 ブログ更新: 不安の官僚的事情 http://bit.ly/VOKUC
- 19:49 @yonda4 子供の貧困 阿部彩 ずーっと気になっていた本。僕はリフレ政策を指示しているけれど、ますますその思いを強くした。
- 20:28 やっぱり音楽は音色だよなーと思う。聞いたことのない音や声の魅力には逆らえない。
- 21:35 RT @divamover: RT @cwelsh RT @TEDchris: Jonathan Zittrain #TED talk: the web's potential for acts of kindness http://on.ted.com/3E
- 21:37 今RTしたTED talk出てきたサイト、その名も「ヒトラー似の猫」。ばかばかしくてにんまりしてしまった。チョビ髭だけじゃん。http://www.catsthatlooklikehitler.com/
2009年9月21日月曜日
今日のTwitter Sun, Sep 20
- 03:04 書きました。 Sat, Sep 19 http://bit.ly/3ts1wj
- 08:05 one piece 見てた。尾田先生の大人の仕事を感じたな。
- 09:12 お昼はお好み焼き。あとで三茶にいこう。人多そうだな。
- 09:14 スパチュラとフライ返しの中間、しかし若干スパチュラよりの道具が欲しい。
- 09:14 と、お好み焼きをひっくり返しながら思った。
- 13:31 Wii の「タクト・オブ・マジック」をやってる。チュートリアルが少々長くいらっとしたが、友軍が参加するようになると俄然おもしろい。RTSって興味はあったけどあまりやったことのないジャンルだったので、この出会いはうれしい。
2009年9月20日日曜日
Sat, Sep 19
- 00:46 Wiiのゲーム、「宝島Z」を買ってきた。そりゃあWiiが一番売れる訳だ、これは楽しすぎる!
- 06:25 書きました。 勝間和代のBook Loversを聴いた その2 http://bit.ly/4wzFXh
- 19:03 @yonda4 outliers malcolm gladwell これは面白かった。タレブの作品と通ずるものがある。
- 19:05 @yonda4 将軍たちの金庫番 佐藤雅美 これも素晴らしい。こんな本が文庫になっているという奇跡。ただ惜しむらくは用語の解説が貧弱なこと。金融政策、それも江戸時代の話なのだから、用語は逐次、しつこいくらいに解説しておけば、もっと多くの人が読むと思う。
- 19:10 @yonda4 安全神話崩壊のパラドックス 河合幹雄 まるで妥当の国から妥当を広めにきたような本。犯罪に対する感情、感覚現実をこれ以上やさしく明瞭に語るのは不可能じゃないだろうか。しかしそれでもこの本の難易度では広く啓蒙することは無理だろう。
- 19:10 感覚現実じゃなくて、「感覚、そして現実」と言いたかった。
- 19:53 チャーハン作った。うまくいったぜ、ベイベー。
2009年9月19日土曜日
勝間和代のBook Loversを聴いた その2
はい。珍しく予告通りのその2です。前回のエントリーは経済学者の田中秀臣先生をはじめ、ブログ等で紹介してくださった方々がいました。ありがとうございます。
さて、今回は経済学者の飯田泰之先生です。前半はミクロ経済学の話ですが、徐々にマクロの話へ移行していきます。経済成長とは具体的に何なのか、何をどうすれば経済成長といえるのかが語られます。
僕はさっそく本編で紹介されている『哲学思考トレーニング』と『将軍たちの金庫番』を買いました。んで、江戸時代の経済史を解説した『金庫番』は僕もおすすめします、文庫本ですし。前回の内容とも関わりますが、官僚と金融政策がテーマと言ってもいい本で、とくに幕府とハリスの交渉の解説は必読でしょう。官僚的な人ってのはいつの時代でも変わらないのか、と脱力すること間違いなしです。江戸の三大改革の経済的な実態は、もうなんというか情けなさでいっぱいです。自分の不遇さや劣等感を、倹約や禁欲と称して正当化し、周囲に押しつけるオジサンがたくさん出てきますよ。
さて、前回同様、実際の文言とはかなり違います。あとやっぱり長いです。何を言っているのか正確に知りたい方はBook Lovers本編を聴いてください。(2009年8月17日から21日までの放送です。)
(一日目)
勝間さん(以下 K):経済学の面白さ、志した理由を教えてください。
飯田さん(以下 I):もともと歴史好きなのですが、歴史が大きく動くときは経済も大きく動きます。例えば世界恐慌、そして昭和恐慌を経て、日本は貧困の問題を抱えて軍国主義に向かいました。こういうダイナミズムを研究してみたい、と思って大学院にいきました。院にいくと民間の就職先はそうそうないんで、気づいたら大学の先生になってましたね。
K:経済学は日常でこそ活きるんだ、と私は思ってるんですが、あまり理解されません。
I:そうですね。経済学のベースは個人の選択、何をして何をしないか、です。そこで問題になるのが限りある貴重なものをどう分配するか、ということです。勝間さんの本の中にもよく出てきますが、僕らにとって最も貴重なものは時間だと思います。その時間の割り振りというのは、一番経済学的な思考を必要としていると思います。これは日常の時間の使い方にも当てはまります。貴重なものの分配をどうするか、これをロジカルにやるのが経済学です。
K:私は会計士の勉強で経済学をやりました。経済学的に考える習慣がある人ない人で随分違いますね。
I:そうですね。特に機会費用という考え方が重要ですね。家で半日ぼうっとしているコストはどれくらいでしょう? お金を使わないのでコストゼロだ、と思ってしまうところですが、何か楽しいことをしたり、将来のために勉強したり、仕事をしてお金を稼いだりすることができたわけです。その実際の利益と実際には生まれなかった利益の差額が機会費用です。
K:時間の使い方に対する考え方が変わってきますね。
I:一般に経済学というとGDPとか為替というイメージですが、それはかなり応用の話で、基本は身近な意思決定です。応用の話はビジネスの最前線にいる人でないと、あまり重要ではないかもしれません。
K:応用がわかったところで予測も難しい。
I:予測できない、ということがわかります。なので日常に活きる経済学的思考が重要だと考えています。今日の本はそういう本です。
K:タイトルに「哲学」がついているのでわかりにくいですが、内容としてはロジカル・シンキング、クリティカル・シンキングの本ですね。クリティカル(批判的)にはネガティブなイメージがあるようですが、そうではないんですよね。
I:確かに批判というと文句ばっかり言っているイメージですが、考え方をブラッシュ・アップしていこう、ということだと思っています。この本はタイトルで随分損をしていて、なんだかカントとかが出てきそう。実際には論理的思考トレーニング、といったところです。
K:類書に照屋華子さん、岡田恵子さんの『ロジカル・シンキング』という本があります。
I:はい。大学の僕のゼミでは必ず『ロジカル・シンキング』が一冊目です。これで基本の型を作ります。そして次に自分にあった思考法を今回の本で見つけてもらいたいんですね。自分で思考の型を作るための支援をしてくれる本です。具体的には、良い推論と悪い推論のちがいや、演繹法だけでなく帰納法も必要な理由、科学と疑似科学の差、などがやさしく解説されています。
(一日目はここまで)
(二日目)
I:この本は小説なのであまり内容に触れるわけにはいかないのですが、昨日お話しした機会費用が大きく関わってきます。サラリーマンにとって起業はとても大きな賭けです。起業10年後に生き残っている会社は実に3%しかない、というデータもあります。この本は、ある男の子が起業をしようとするけど周りから止められる、迷っているうちに友人が……、というふうに進んでいきます。普通ビジネス小説というと、努力して困難に打ち勝って成功する、というイメージですが、この本はかなり違います。経済学的に妥当な展開をしていきます。
K:本文中に経済理論の説明が出てきます。
I:はい。経済理論に基づいた意思決定が描かれています。経済学の教科書というのははっきり言って面白くないんですね。この本は身近な出来事を題材にしているので、入門に良い本だと思います。この本を読んだ後、すこし堅めの経済学の本に進んでみるといいと思います。
K:小説の中で屈曲需要曲線に出会ったのは初めてです。
I:(笑) 実際に経済学を必要としているのはビジネス・パーソンです。しかし、経済学の本の多くはそういう人に向けて書かれていません。これまで経済学者たちは、経済学そのもののセールスをしてきませんでした。
K:アカデミックな場面以外で経済学が使えるということを、一般の人に知ってもらおうとしてこなかったわけですね。
I:僕は自分のことを「経済学のセールスマン」であると思っています。今大学では経済学があまり人気がないんです。
I:ないですね〜。大学にもよりますが、男女比8:2くらいの大学も多いと思いますよ。東大に至っては9:1くらいでしょう。これは実にもったいないことです。英米系の大学ではエコノミクスが一番メジャーな専攻*1です。日本の場合、社会科学なら法学部、文学部。あとは工学部でしょうか。経済学は世界言語といえますから、これはホントにもったいないです。
K:私は日常で「効用」という言葉を使ってしまうのですが、通じていないのかもしれません。
I:効用というと、お薬の効能のことだと思われているかもしれません。効用というのは、自分の心の中で感じる満足度、のことです。経済学では重要な概念です。
K:機会費用を考えるというのはまさに、効用を比べるということですね。自分にとって一番満足のいく選択肢を探るということですから。自分の満足と手持ちの資源(時間やお金)、これを計って選択をしていくと、とても人生が面白いですよね。
I:そうなんです。「どうやったら自分の効用を改善していけるんだろう?」という疑問を頭の片隅に置いておくだけで、小さな意思決定の際に良い方を選べるようになってきます。逆に漫然と何かをすると、結局何もしないで終わってしまいがちですよね。
K:機会費用の概念を理解するだけで人生は随分変わってきます。
I:経済学というと金のことばっかり考えてる、と言われてしまうんですが、重要なのは自分の心の中の満足や目標です。それがちょっとづつでも改善したり前進したりすることが大事です。
(二日目はここまで)
(三日目)
I:昨日と一昨日は個人にとっての経済学の話でした。実際にビジネスを続けていくと、景気や経済政策が重要な意味を持ってきます。僕は景気についての理解が、日本の場合あまり広まっていないと思います。一般的にもそうですが、新聞記者さんでも曖昧な理解しかしていないようです。そこでこの本を紹介します。
K:サイクルとしての景気と、絶対水準としての景気がありますが、日本の場合、絶対水準としての景気ばかり注目されているようです。
I:はい。絶対水準としての景気と、景気が拡大しているかどうか(良くなっているのか悪くなっているのか)。この二つを区別しないと政策はうまくいきません。例えばいざなぎ越えと言われた2003年から07年にかけての好景気があります。一応これは景気の拡大、です。が、好景気だったのは一年もないと僕は考えています。
K:つまり絶対水準としての景気は良くなっていない、ということですね。そもそも好景気って何なんでしょうか。
I:経済学的には、潜在成長率を越えて成長しているかどうか、です。潜在成長率というのは計測が難しいんですが、今ある資源や人材を全て活かしたらどの程度モノが生み出せるのか、ということです。潜在成長率は計測する人によってバラバラの数字が出てきますが、大変おおざっぱに言いますと、年率2%です。なので名目GDPから物価上昇率を差し引いた実質GDPで2%以上成長していれば好景気といえます。
K:それは日本だけでなく?
I:はい。潜在成長率は、世界的にここ100年くらいそういう水準です。日本の場合、実質GDPがここ20年、年率0.数%でしか成長していません。なので、いざなぎ越えといわれる好景気でも、自分たちの暮らしが良くならない、と感じるわけです。そこで「景気が良いなんてのはイカサマか?」と言われてしまうんですが、景気は拡大しているんですが、絶対水準としての景気は良くなっていない、ということなんですね。この程度の拡大ではどうにもならないんです。
K:実感できないんですね。
I:そのせいで、経済成長や景気に対する非常に大きな不信感を生んでしまいました。さらに、日本銀行や財務省は、景気が良すぎる、と言いはじめました。
K:はあ!?
I:2006年の量的緩和解除の理由の一つが、バブル的に景気が良くなるかもしれない、というものでした。その予防的な措置だ、と日銀は言っています。予防も何も良くなってないじゃないかと思うのですが、なんだかよくわかりません。
K:解除は大失敗でした。
I:『景気って何だろう』にはそういった問題がよく整理されて載っていますし、ちくまプリマー新書の想定読者は高校生ですから、とてもわかりやすく書かれています。本書のなかにもありますが、景気の話で重要になるのはインフレとデフレです。景気の拡大を継続して、絶対水準で良いところに持っていきたいわけですが、デフレ状態では不可能です。デフレで景気が良いというのは、ほとんど形容矛盾です。
K:ハイパーインフレは恐れるのにデフレは恐れないというのが本当に不思議です。
I:その理由の一つに、デフレで心地よくなる人が結構いるってことが言えると思います。
K:はあ!?
I:(笑) 自分で商売をしている人や、ビジネスの最前線にいる人にとっては、まさに「はあ!?」としか言いようがないんですが、例えば僕の母親は「モノが安くなった」と大変喜んでいます。
K:お給料が一定で支払われいる人にすれば、収入は変わらないわけですからモノが安くなるほうが良いに決まってるわけですね。
I:そういう人びとが初めてデフレの害に気づくのは失業したときと倒産したときです。そこまで行かないと気づかないというのは、とても恐ろしいことです。
K:貧困問題のディベートに参加したときに、「デフレがいけないんですよ」と言ってもまったく理解してもらえませんでした。一体それが貧困問題とどう結びつくのか気づいてもらえませんでした。
I:貧困問題は企業が強欲だからだ、と言い返されてしまいますよね。しかし企業を攻撃するのはあまり意味がないと思います。実際に価値を生み出しているのは企業セクターですから。
K:デフレは例えるなら血液がどんどん減っている状況です。不健康になるのは当然といえます。
I:そうですね。ここ一年間でイギリスの中央銀行、Bank of Englandは貨幣の供給、つまり血液の供給を倍にしています。ものすごく輸血しているわけです。アメリカの中央銀行FRBも、80%くらい増やしてます。ケチで有名なユーロ圏の中央銀行ECBも50%くらい増やしてます。もちろんこれらの措置は金融危機に対応するためです。で、日本銀行は、だいたい5%くらい減らしています。さらにお金を増やしたときの波及効果(貨幣乗数)も下がってきていますので、急速な勢いでお金が足りなくなっている、といえます。血が足りない、でも輸血はしたくない、という状況です。
K:どう考えたらそういう政策になるのか、そこが謎なんです。謎といえば、法学部をでている人がなんで日銀に行くのかも謎です。
I:それは確かに不思議なんですが、日銀に入る人はエコノミスト組もけっこういます。しかし彼らの意見が政策に反映されることは全くありません。関係ないって思われているようです。
K:ひどい話です。
I:日銀は国民の審判を受けていない組織です。なので逆に世論を過度に気にします。つまり「自分たちは国民の信任に基づいて政策を実行する」という風に強気には出れないんですね。なので国民が嫌がるであろうインフレ政策を採用できないんです。
K:なるほど。飯田さんのお母様だったら「物価が上がって困る」と感じるから、ですね(笑)。
I:そうなんです(笑)。
K:この間石油や小麦(コモディティ)の値段が上がったとき、国民は大騒ぎでした。私はこれでインフレになるかも、と期待していましたが。
I:そもそもコモディティの値段は、中央銀行にはどうしようもないわけです。石油価格が上がって、それによってインフレになるのを日銀がコントロールすることはできません。仕方のないことですから。逆に石油価格が上昇しているのに金融を引き締めてしまえば、ますます血液が足りなくなってしまう。他の商品を一部あきらめて石油にお金を割かざるを得ないのに、さらにお金が減ってしまうわけですからね。資源インフレのときは、むしろ金融を緩和する必要があったんです。
K:それは経済学を学んでいればわかることですよね。
I:これは僕の仮説ですが、日銀が世論をすごく気にするのは、政治家がインフレを嫌がる国民の期待に応えて、日銀法を改正して独立性を取り上げてしまう、そうなることを一番恐れているからだと思います。なので、政治家以上に過剰に世論に反応してしまう。これがデフレの原因の一つだと思っています。
K:合成の誤謬ですね。一人一人の利益と国民全体の利益が相反している。こうなると国民の正しい理解がカギになってきます。
(三日目はここまで)
(四日目)
I:今日の本は、江戸時代の経済の歴史の本です。江戸時代の経済政策、そのなかでも金融政策について詳しく書かれています。著者の佐藤雅美さんは小説家ですが、佐藤さんの小説は変わっていて、いつも江戸時代の経済、裁判、医療の話なんですね。今日紹介する本は小説ではなくて資料の解説のような感じです。
K:江戸時代の社会学的な作品をつくる作家さんなんですね。
I:僕は将来歴史小説家になりたいんですが、それほど江戸時代におもしろさを感じています。江戸時代に唯一足りなかったのはエネルギー革命だけだったと考えています。
K:それで人口も増えなかったんですよね。生産性もそんなに上がらなかった。
I:商業のシステムは発達していました。世界で初の先物取引所がありましたし、商人の力もあり教育水準が高い。国内の流通、郵便網もできていましたし、貨幣経済も発達していました。ここまでできて日本で産業革命が起こらなかったのは、やはり蒸気機関が日本にはなかったからでしょうね。
K:石炭はとれていたわけですから、作っていてもおかしくないんですけどね。発想がなかった。科学における遅れは、やはり貿易制限の影響でしょうか。
I:そうですね。それと日本の場合は、誰が偉いかといえば文系が偉いわけです。
K:どうしてもその話になりますね(笑)。士農工商ですもんね。
I:時代劇で見るような江戸の町並みはすべて1820年代を再現したものです。また、僕たちが江戸っぽいな、と思うもの、寿司、うなぎ、天ぷら、歌舞伎、浮世絵、こういったものも1820年代のものです。
K:もう明治の直前なんですね。
I:そうなんです。なので時代劇で徳川吉宗や水戸黄門が1820年代の江戸の町並みを歩いているというのは実に困った話なんですが、撮影されている太秦の町並みが1820年代ですからそうなっちゃうんですね。
K:私たちが2300年代にいるような感じですね。
I:ではなぜ1820年代がこんなに影響力を持つほど素晴らしい時代だったのかというと、これが金融政策の話になります。徳川家斉という浪費家の将軍がいまして、彼が老中に「どうしても贅沢がしたいんだ」と、そんなことを言うわけです。で、老中はお金をなんとか集めなきゃいけなくなるんですが、そこで貨幣の改鋳を行います。一枚の貨幣に含まれる金や銀の量を減らすことで、貨幣をより多く作ったわけです。例えるなら、一円分の銀しか入っていないのに、これは十円です、って言い張るわけですから、九円儲かるわけです。
K:今のお金の作り方と同じですよね。
I:そうなんです。これを乱発したんです。そうするとどうなるかというと、インフレになります。その結果、江戸の街は好景気になりました。そして、うなぎを食べたり、初鰹に一両なんて値がついたり、みんなで歌舞伎を見に行ったり、お伊勢参りに行ったりするようになったんですね。
K:バブルですね。
I:そう、文政バブル絶頂期というのが、今の日本人の江戸のイメージを作り上げているんです。
K:バブルというのはいつか弾けますが、文政バブルも弾けたんでしょうか。
I:ここが非常に賢いところで、急激なバブルを起こさないようにゆっくりとお金の量を増やしていったんですね。年率にすると1%くらいです。1%というのは現代ではすごく少ないんですが、当時はお金の量というのは減るかそのままかどちらかでしたから、その頃としては1%インフレが10年続くというのは充分に影響力のある数字です。そのおかげでとても安定して成長していきました。
K:まさにインフレ・ターゲットですね。
I:やがてバブルも弾ける、というよりもしぼんで終わってしまうのですが、それはこの政策をすすめた老中が在職中に亡くなってしまったからです。そうするとやはり、「こんな貨幣を乱発するような政策はけしからん」という雰囲気になってきます。そうして引き締め政策、つまりデフレ政策がとられるようになりました(天保の改革*2)。さらに、「商人は儲けすぎている」ということになって、規制が増えていきました。
K:そんなことをすれば大変な失業を生み出しますよね。
I:このデフレ政策によって、江戸というのは、ほとんど街の火が消えてしまったような状態になりました。
K:どこかで聞いたような話ですよね(笑)。1980、90年代の日本みたいです。
I:そうなんです。実は日本は江戸時代の頭からこれを繰り返しています。景気が良くなると意図的に引き締めてしまう。80年代後半からのバブルでも、アメリカのサブプライムローンバブルのように派手に弾けることはしないで、意図的に規制や金融引締めを行って潰しましたよね。そこで問題なのは、弾けたときよりも、意図的に潰したときの方がダメージが少なかったと言えるのか、ということです。
K:とんでもない。長期停滞を招きました。
I:弾けた後に手を打った方が軟着陸となったかもしれません。江戸時代の経済史を見ていくと、景気を重視し商人の活躍を評価する人たちと、商人がのさばるような世の中はけしからん、という人たちのせめぎ合いがあるようです。
K:それもどこかで聞いたことがありますね(笑)。
I:はい(笑)。江戸時代はそれでもいいんです。武家政権なわけですから、お侍が一番偉い。でも現代でも何故かそういう考え方が残っているんですね。
K:経済学部が不人気だというお話がありました。私は商学部なんですが、経済学部よりもさらに人気がないんです。ビジネス、商売、というとさらに女子が少なくなります。MBAというと元々商学部なんですが、こちらは何故か人気があります。
I:女性がビジネスに関心を持つ、ということに抵抗を持っている人がいるんですよね。会社の中に優秀な女性を囲い込もうとしない、結婚退職させる、なんていうのはとんでもない資源の浪費です。女性がビジネスに向かないと考えるのは男だけですね。
K:日本の男性だけですよ。日本は先進国のなかでも女性経営者、女性管理職の割合が極端に低いです。その上でそういう浪費をするから景気が回復しないんです。なので、潜在成長率は2%というお話がありましたが、それを越えて成長するためには、お金を刷って、典型的な働き方をしなくても人びとが活躍できる社会にすればいいんですよね。ある意味これだけなんです。
I:そうなんです。僕は非常に単純な一本道だと思っています。
(四日目はここまで)
(五日目)
K:最終日の本は『経済成長ってなんで必要なんだろう』です。飯田さんが中心となっている対談を収めた本です。なぜ経済成長は必要なんでしょう?
I:どうやら人間というのは、毎年2%くらい要領が良くなっていくようなんです。人びとが2%分、より仕事ができるようになっているのに、経済の規模が成長しない場合どうなるかというと、毎年2%の人が必要なくなっていくんです。
K:恐ろしい話です。
I:言い換えると、毎年2%の人が失業していくわけです。アメリカやヨーロッパでは、もちろん経済の成長が2%を下回ることはあるんですが、平均すると2.5%~3%で成長しています。こうなると、いつもちょっと人が足りていないような、そういう状態が維持できます。
K:新しく社会に出る若者の雇用が生まれるわけですね。
I:そうです。それに対して日本の場合、1%かそれ以下の成長がずっと続いています。そうすると、だんだん人が要らなくなってくるわけです。長い目で見ると経済成長の源泉は、人びとが仕事に馴れて、そして新しい発明が生まれ、付加価値をより多く生み出していくことです。個々人が2%の成長を繰り返していく中で、新しい産業が起こり、経済全体も成長していきます。ところが、若者に雇用が足りていないと、2%成長するチャンスがない、ということになりますから、周囲との格差が生まれますし、経済も長期的に停滞します。これを防ぐためには、経済が2%成長しないと話になりません。
K:最低限実質成長率が2%ないと社会が維持できないんですね。
I:定常型社会を目指す、とかよく言われますが、定常型社会というのは0%成長のことではありません。人間の成長に会わせた2%の経済成長がなければ無理です。こういうふうに言うと、経済成長はもう出来ない、と言い返されます。これだけ物が豊かな社会のどこで成長するのか、と。この主張に対する重要な反論は「日本以外全部成長してますが、何か?」です。むしろ、なぜ日本だけできないのか説明して欲しい。なぜか日本では若者でも「もう成長をあきらめよう」というようなことを言う人たちがいますね。
K:アメリカもヨーロッパも成長しているのに。
I:はい。しかも、多くの人が経済成長のイメージとして、米を二倍食うとか、服を二倍買う、という感じでとらえているようです。付加価値という考え方が広まっていないんですね。
K:機会費用の考え方が理解されない、というのが今週のテーマのようになっていますが、付加価値の考え方もですか。
I:どうしても量で考えてしまって、もっと美味しいもの、もっとデザインの優れたもの、という質的な経済成長の考え方になかなか至らないんですね。しかし現実には1970年代に量的な成長というのは終わっています。
K:買い物をするときにいつもより高いシャツを買う、とかそういう成長なんですよね。
I:それと、この本で貧困問題について取り組んでいらっしゃる湯浅誠さんと対談しました。何が貧困をつくりだしているのか? デフレと不況がつくっているんだ、ということが、貧困問題を語る人たちの考えから抜けてしまっているように思いました。
K:私も湯浅さんと対談しましたが、そこが議論になりました。湯浅さんは介護や農業にまわればいい、と言っていましたが、それだけでは全然足りないと思います。
I:現在ここまで失業が深刻になったのは、まさしく不況だからです。さらに、不況で失業者が多いですから、上司は部下にプレッシャーをかけやすくなります。「お前の代わりはいくらでも」というわけです。これが生きづらさ生む要因にもなっているでしょう。このように考えますと、様々な問題がありますが、本丸は景気が悪いこと、です。もし景気が良くなって、人手不足になれば企業は労働者の様々な要求に応じるでしょう。例えば、労働時間を自分で選ぶ、とか。
K:なぜ日本では景気が悪くなると長時間労働になるんでしょう。
I:景気が悪くなると、企業は給料を下げたくなるんですが、これはなかなか実現しません。なので同じ月給で長時間働かせることで時給を下げるわけです。デフレで売上げが落ちてますから、企業としてはそうでもしないとペイしないわけですね。
K:デフレだからこそ長時間労働になるんですね。だからインフレ・ターゲットと総労働時間規制を一緒にしないとだめだと思うんです。そこで最低賃金だけ上げてしまうと、単に失業者を増やすだけになってしまう。
I:そうなんです。最低賃金についてはこの本でも語りましたが、雨宮処凛さんと出した『脱貧困の経済学』という本でも解説しています。最低賃金がもし1,000円になったら、地方のサービス業は壊滅です。例えば東北地方の県庁所在地じゃない市の居酒屋さんは一時間1,000円も稼げているわけがないんですよ。
K:民主党はマニュフェストに入れてしまいました。
I:一つカラクリがあるとすれば、日本では最低賃金を守っている企業はほとんどないということです。守っているのは一部の大企業だけ。しかも破ったところで目立った罰則もないですし。なので、今は選挙直前ですが、もしかしたら民主党は最低賃金を上げると主張しても実害はない、と踏んでいるのかもしれません。
K:各政党のマニュフェストを見るたびに、そこが本質じゃないだろう、というような話ばかりです。
I:そうなんですよね。各政党の経済理解の問題もありますが、選挙民の前で経済の話をしてもわかってもらえない、というのもあると思います。インフレにする、なんて言ったら選挙には落ちてしまうでしょうね。増税や再配分のしかたを変更する、というのも同様でしょう。しかし実際には、2%のインフレと2%の実質成長があると、毎年だいたい4.5%税収が伸びるんですね。
K:良い話じゃないですか。今デフレで国債の実質負担がどんどん増えてますよね。額面だけが注目を集めていますが、政府は何を考えているんでしょう。
I:それには財務省内のセクト主義が関係しています。景気が良い時には、国債の額面の金利が上がります。お金を返す時、名目では利子が高くみえるわけですね。それがいやだから、デフレを放置している。
K:ええ!? クーポン(表面金利。国債の額面の金利)なんかより元本のほうがよっぽど大きいじゃないですか。物価が下がれば発行した国債全ての実質負担が上がってしまいます。新しく出す国債の額面の金利なんか問題にならないでしょう?
I:その通りなんですが、「それはウチの課の仕事ではないんで」と言うんですね。「ウチは国債のクーポンを決めるのが仕事であって、返済についてはヨソでやってます」ということです。
K:……。一度二人で行脚しましょうか。国会議員に経済学を知ってもらわないと。
I:どちらの政権になるにせよ、議員の先生方に説明しなくてはいけないでしょうね。ところで、今日紹介した二冊の本の中では、ベーシック・インカムの導入を推奨しています。
K:今の税制や社会保障は、国民を年齢や家族形態で分けて扱っています。そうではなくて、人びとの生活における必要性で分けていくべきですよね。
I:そうですね。そこで一番大きな問題は、日本の若者の場合、税金を取られた後の方が不平等度が上がってしまっているんです。普通の国では、税金というのは多く持っている人から多く取るわけですから、取った後再配分すると、人びとの不平等はちょっと是正されるはずなんです。ところが日本の場合は不平等が拡大されてしまう。
K:特に高所得者の負担が意外と低いんです。これは社会保障料が一定額であるからだと思います。どんなに貧乏でも国民年金保険料には14,660円、どんなにお金持ちでも14,660円です。社会保障における税金の割合を上げて、社会保障料の割合を下げないと不公平感はなくならないでしょう。お金持ちは税金で5割取られてるんだからもう充分だ、と反論してくるでしょうけども。
I:しかしそれも10年くらい前までは最高で75%でした。75%はやり過ぎですが、せめて90年代半ばの水準、60%にはもどして欲しいですね。
K:5割取られるのがイヤな人は法人税にしてしまうんですよね。それでおおむね4割になりますから。他にも抜け穴があります。納税者番号のない弊害です。
I:納税者番号がない、そして消費税がよくわからない大福帳方式、というのが問題です。
K:益税の問題ですね。消費者が税金として支払ったお金が、事業者によって納税されずにどこかに消えてしまう。
I:今日紹介した二冊では、今何が必要なのか語っています。生活が苦しかったり、ビジネスがうまく行かなかったりするその元の原因はなんなのか、知って欲しいですね。
(おしまい)
さて、統計は難しいなあとつくづく思うのですが、日本の経済が過去20年、どれくらい成長したのか、ずばっと言い表すのはなかなか難しいようです。というもの、数値が過去にさかのぼって改訂されることがままあるからです。本編中で飯田先生は「0.数%」「1%かそれ以下」としていますが、扱う数値によって差があるようです。しかしそれでも2%は超えないみたいですよ。(僕の手元にある伊藤元重・下井直毅『マクロ経済学パーフェクトマスター』の付録には2001年までの数値しかありませんが、1990〜2001年の経済成長率の平均は、1.583%です。また、飯田泰之・中里透『コンパクトマクロ経済学』では「1993年から2002年の平均経済成長率は1%前後であり、これは過去の日本経済や最近の先進国と比べてもとくに低い成長率となっています。」[p.170]とあります。)
アメリカの経済学者レベッカ・ワイルダーさんがブログで、FRB、BOE、ECBの比較をしていました。それによると、この3中央銀行の金融緩和は不十分であるかもしれない、とのこと。貸し出しがのびておらず、信用創造が進んでいないので、金融緩和を止めるにはあまりにも早すぎる、としています。もちろんこの比較に我らがBOJは出てきません。だって始めから引き締めてるんだもの。
追記:飯田先生が紹介している伊勢田哲治著『哲学思考トレーニング』を読んで書評を書きました。コチラです。
さて、今回は経済学者の飯田泰之先生です。前半はミクロ経済学の話ですが、徐々にマクロの話へ移行していきます。経済成長とは具体的に何なのか、何をどうすれば経済成長といえるのかが語られます。
僕はさっそく本編で紹介されている『哲学思考トレーニング』と『将軍たちの金庫番』を買いました。んで、江戸時代の経済史を解説した『金庫番』は僕もおすすめします、文庫本ですし。前回の内容とも関わりますが、官僚と金融政策がテーマと言ってもいい本で、とくに幕府とハリスの交渉の解説は必読でしょう。官僚的な人ってのはいつの時代でも変わらないのか、と脱力すること間違いなしです。江戸の三大改革の経済的な実態は、もうなんというか情けなさでいっぱいです。自分の不遇さや劣等感を、倹約や禁欲と称して正当化し、周囲に押しつけるオジサンがたくさん出てきますよ。
さて、前回同様、実際の文言とはかなり違います。あとやっぱり長いです。何を言っているのか正確に知りたい方はBook Lovers本編を聴いてください。(2009年8月17日から21日までの放送です。)
(一日目)
勝間さん(以下 K):経済学の面白さ、志した理由を教えてください。
飯田さん(以下 I):もともと歴史好きなのですが、歴史が大きく動くときは経済も大きく動きます。例えば世界恐慌、そして昭和恐慌を経て、日本は貧困の問題を抱えて軍国主義に向かいました。こういうダイナミズムを研究してみたい、と思って大学院にいきました。院にいくと民間の就職先はそうそうないんで、気づいたら大学の先生になってましたね。
K:経済学は日常でこそ活きるんだ、と私は思ってるんですが、あまり理解されません。
I:そうですね。経済学のベースは個人の選択、何をして何をしないか、です。そこで問題になるのが限りある貴重なものをどう分配するか、ということです。勝間さんの本の中にもよく出てきますが、僕らにとって最も貴重なものは時間だと思います。その時間の割り振りというのは、一番経済学的な思考を必要としていると思います。これは日常の時間の使い方にも当てはまります。貴重なものの分配をどうするか、これをロジカルにやるのが経済学です。
K:私は会計士の勉強で経済学をやりました。経済学的に考える習慣がある人ない人で随分違いますね。
I:そうですね。特に機会費用という考え方が重要ですね。家で半日ぼうっとしているコストはどれくらいでしょう? お金を使わないのでコストゼロだ、と思ってしまうところですが、何か楽しいことをしたり、将来のために勉強したり、仕事をしてお金を稼いだりすることができたわけです。その実際の利益と実際には生まれなかった利益の差額が機会費用です。
K:時間の使い方に対する考え方が変わってきますね。
I:一般に経済学というとGDPとか為替というイメージですが、それはかなり応用の話で、基本は身近な意思決定です。応用の話はビジネスの最前線にいる人でないと、あまり重要ではないかもしれません。
K:応用がわかったところで予測も難しい。
哲学思考 トレーニング 伊勢田哲治 |
K:タイトルに「哲学」がついているのでわかりにくいですが、内容としてはロジカル・シンキング、クリティカル・シンキングの本ですね。クリティカル(批判的)にはネガティブなイメージがあるようですが、そうではないんですよね。
I:確かに批判というと文句ばっかり言っているイメージですが、考え方をブラッシュ・アップしていこう、ということだと思っています。この本はタイトルで随分損をしていて、なんだかカントとかが出てきそう。実際には論理的思考トレーニング、といったところです。
ロジカル・シンキング 照屋華子・岡田恵子 |
I:はい。大学の僕のゼミでは必ず『ロジカル・シンキング』が一冊目です。これで基本の型を作ります。そして次に自分にあった思考法を今回の本で見つけてもらいたいんですね。自分で思考の型を作るための支援をしてくれる本です。具体的には、良い推論と悪い推論のちがいや、演繹法だけでなく帰納法も必要な理由、科学と疑似科学の差、などがやさしく解説されています。
(一日目はここまで)
(二日目)
東大を出ると 社長になれない 水指丈夫 |
K:本文中に経済理論の説明が出てきます。
I:はい。経済理論に基づいた意思決定が描かれています。経済学の教科書というのははっきり言って面白くないんですね。この本は身近な出来事を題材にしているので、入門に良い本だと思います。この本を読んだ後、すこし堅めの経済学の本に進んでみるといいと思います。
K:小説の中で屈曲需要曲線に出会ったのは初めてです。
I:(笑) 実際に経済学を必要としているのはビジネス・パーソンです。しかし、経済学の本の多くはそういう人に向けて書かれていません。これまで経済学者たちは、経済学そのもののセールスをしてきませんでした。
K:アカデミックな場面以外で経済学が使えるということを、一般の人に知ってもらおうとしてこなかったわけですね。
I:僕は自分のことを「経済学のセールスマン」であると思っています。今大学では経済学があまり人気がないんです。
K:特に女子に人気がないですね。
I:ないですね〜。大学にもよりますが、男女比8:2くらいの大学も多いと思いますよ。東大に至っては9:1くらいでしょう。これは実にもったいないことです。英米系の大学ではエコノミクスが一番メジャーな専攻*1です。日本の場合、社会科学なら法学部、文学部。あとは工学部でしょうか。経済学は世界言語といえますから、これはホントにもったいないです。
K:私は日常で「効用」という言葉を使ってしまうのですが、通じていないのかもしれません。
I:効用というと、お薬の効能のことだと思われているかもしれません。効用というのは、自分の心の中で感じる満足度、のことです。経済学では重要な概念です。
K:機会費用を考えるというのはまさに、効用を比べるということですね。自分にとって一番満足のいく選択肢を探るということですから。自分の満足と手持ちの資源(時間やお金)、これを計って選択をしていくと、とても人生が面白いですよね。
I:そうなんです。「どうやったら自分の効用を改善していけるんだろう?」という疑問を頭の片隅に置いておくだけで、小さな意思決定の際に良い方を選べるようになってきます。逆に漫然と何かをすると、結局何もしないで終わってしまいがちですよね。
K:機会費用の概念を理解するだけで人生は随分変わってきます。
I:経済学というと金のことばっかり考えてる、と言われてしまうんですが、重要なのは自分の心の中の満足や目標です。それがちょっとづつでも改善したり前進したりすることが大事です。
(二日目はここまで)
(三日目)
景気って何だろう 岩田規久男 |
K:サイクルとしての景気と、絶対水準としての景気がありますが、日本の場合、絶対水準としての景気ばかり注目されているようです。
I:はい。絶対水準としての景気と、景気が拡大しているかどうか(良くなっているのか悪くなっているのか)。この二つを区別しないと政策はうまくいきません。例えばいざなぎ越えと言われた2003年から07年にかけての好景気があります。一応これは景気の拡大、です。が、好景気だったのは一年もないと僕は考えています。
K:つまり絶対水準としての景気は良くなっていない、ということですね。そもそも好景気って何なんでしょうか。
I:経済学的には、潜在成長率を越えて成長しているかどうか、です。潜在成長率というのは計測が難しいんですが、今ある資源や人材を全て活かしたらどの程度モノが生み出せるのか、ということです。潜在成長率は計測する人によってバラバラの数字が出てきますが、大変おおざっぱに言いますと、年率2%です。なので名目GDPから物価上昇率を差し引いた実質GDPで2%以上成長していれば好景気といえます。
K:それは日本だけでなく?
I:はい。潜在成長率は、世界的にここ100年くらいそういう水準です。日本の場合、実質GDPがここ20年、年率0.数%でしか成長していません。なので、いざなぎ越えといわれる好景気でも、自分たちの暮らしが良くならない、と感じるわけです。そこで「景気が良いなんてのはイカサマか?」と言われてしまうんですが、景気は拡大しているんですが、絶対水準としての景気は良くなっていない、ということなんですね。この程度の拡大ではどうにもならないんです。
K:実感できないんですね。
I:そのせいで、経済成長や景気に対する非常に大きな不信感を生んでしまいました。さらに、日本銀行や財務省は、景気が良すぎる、と言いはじめました。
K:はあ!?
I:2006年の量的緩和解除の理由の一つが、バブル的に景気が良くなるかもしれない、というものでした。その予防的な措置だ、と日銀は言っています。予防も何も良くなってないじゃないかと思うのですが、なんだかよくわかりません。
K:解除は大失敗でした。
I:『景気って何だろう』にはそういった問題がよく整理されて載っていますし、ちくまプリマー新書の想定読者は高校生ですから、とてもわかりやすく書かれています。本書のなかにもありますが、景気の話で重要になるのはインフレとデフレです。景気の拡大を継続して、絶対水準で良いところに持っていきたいわけですが、デフレ状態では不可能です。デフレで景気が良いというのは、ほとんど形容矛盾です。
K:ハイパーインフレは恐れるのにデフレは恐れないというのが本当に不思議です。
I:その理由の一つに、デフレで心地よくなる人が結構いるってことが言えると思います。
K:はあ!?
I:(笑) 自分で商売をしている人や、ビジネスの最前線にいる人にとっては、まさに「はあ!?」としか言いようがないんですが、例えば僕の母親は「モノが安くなった」と大変喜んでいます。
K:お給料が一定で支払われいる人にすれば、収入は変わらないわけですからモノが安くなるほうが良いに決まってるわけですね。
I:そういう人びとが初めてデフレの害に気づくのは失業したときと倒産したときです。そこまで行かないと気づかないというのは、とても恐ろしいことです。
K:貧困問題のディベートに参加したときに、「デフレがいけないんですよ」と言ってもまったく理解してもらえませんでした。一体それが貧困問題とどう結びつくのか気づいてもらえませんでした。
I:貧困問題は企業が強欲だからだ、と言い返されてしまいますよね。しかし企業を攻撃するのはあまり意味がないと思います。実際に価値を生み出しているのは企業セクターですから。
K:デフレは例えるなら血液がどんどん減っている状況です。不健康になるのは当然といえます。
I:そうですね。ここ一年間でイギリスの中央銀行、Bank of Englandは貨幣の供給、つまり血液の供給を倍にしています。ものすごく輸血しているわけです。アメリカの中央銀行FRBも、80%くらい増やしてます。ケチで有名なユーロ圏の中央銀行ECBも50%くらい増やしてます。もちろんこれらの措置は金融危機に対応するためです。で、日本銀行は、だいたい5%くらい減らしています。さらにお金を増やしたときの波及効果(貨幣乗数)も下がってきていますので、急速な勢いでお金が足りなくなっている、といえます。血が足りない、でも輸血はしたくない、という状況です。
K:どう考えたらそういう政策になるのか、そこが謎なんです。謎といえば、法学部をでている人がなんで日銀に行くのかも謎です。
I:それは確かに不思議なんですが、日銀に入る人はエコノミスト組もけっこういます。しかし彼らの意見が政策に反映されることは全くありません。関係ないって思われているようです。
K:ひどい話です。
I:日銀は国民の審判を受けていない組織です。なので逆に世論を過度に気にします。つまり「自分たちは国民の信任に基づいて政策を実行する」という風に強気には出れないんですね。なので国民が嫌がるであろうインフレ政策を採用できないんです。
K:なるほど。飯田さんのお母様だったら「物価が上がって困る」と感じるから、ですね(笑)。
I:そうなんです(笑)。
K:この間石油や小麦(コモディティ)の値段が上がったとき、国民は大騒ぎでした。私はこれでインフレになるかも、と期待していましたが。
I:そもそもコモディティの値段は、中央銀行にはどうしようもないわけです。石油価格が上がって、それによってインフレになるのを日銀がコントロールすることはできません。仕方のないことですから。逆に石油価格が上昇しているのに金融を引き締めてしまえば、ますます血液が足りなくなってしまう。他の商品を一部あきらめて石油にお金を割かざるを得ないのに、さらにお金が減ってしまうわけですからね。資源インフレのときは、むしろ金融を緩和する必要があったんです。
K:それは経済学を学んでいればわかることですよね。
I:これは僕の仮説ですが、日銀が世論をすごく気にするのは、政治家がインフレを嫌がる国民の期待に応えて、日銀法を改正して独立性を取り上げてしまう、そうなることを一番恐れているからだと思います。なので、政治家以上に過剰に世論に反応してしまう。これがデフレの原因の一つだと思っています。
K:合成の誤謬ですね。一人一人の利益と国民全体の利益が相反している。こうなると国民の正しい理解がカギになってきます。
(三日目はここまで)
(四日目)
将軍たちの 金庫番 佐藤雅美 |
K:江戸時代の社会学的な作品をつくる作家さんなんですね。
I:僕は将来歴史小説家になりたいんですが、それほど江戸時代におもしろさを感じています。江戸時代に唯一足りなかったのはエネルギー革命だけだったと考えています。
K:それで人口も増えなかったんですよね。生産性もそんなに上がらなかった。
I:商業のシステムは発達していました。世界で初の先物取引所がありましたし、商人の力もあり教育水準が高い。国内の流通、郵便網もできていましたし、貨幣経済も発達していました。ここまでできて日本で産業革命が起こらなかったのは、やはり蒸気機関が日本にはなかったからでしょうね。
K:石炭はとれていたわけですから、作っていてもおかしくないんですけどね。発想がなかった。科学における遅れは、やはり貿易制限の影響でしょうか。
I:そうですね。それと日本の場合は、誰が偉いかといえば文系が偉いわけです。
K:どうしてもその話になりますね(笑)。士農工商ですもんね。
I:時代劇で見るような江戸の町並みはすべて1820年代を再現したものです。また、僕たちが江戸っぽいな、と思うもの、寿司、うなぎ、天ぷら、歌舞伎、浮世絵、こういったものも1820年代のものです。
K:もう明治の直前なんですね。
I:そうなんです。なので時代劇で徳川吉宗や水戸黄門が1820年代の江戸の町並みを歩いているというのは実に困った話なんですが、撮影されている太秦の町並みが1820年代ですからそうなっちゃうんですね。
K:私たちが2300年代にいるような感じですね。
I:ではなぜ1820年代がこんなに影響力を持つほど素晴らしい時代だったのかというと、これが金融政策の話になります。徳川家斉という浪費家の将軍がいまして、彼が老中に「どうしても贅沢がしたいんだ」と、そんなことを言うわけです。で、老中はお金をなんとか集めなきゃいけなくなるんですが、そこで貨幣の改鋳を行います。一枚の貨幣に含まれる金や銀の量を減らすことで、貨幣をより多く作ったわけです。例えるなら、一円分の銀しか入っていないのに、これは十円です、って言い張るわけですから、九円儲かるわけです。
K:今のお金の作り方と同じですよね。
I:そうなんです。これを乱発したんです。そうするとどうなるかというと、インフレになります。その結果、江戸の街は好景気になりました。そして、うなぎを食べたり、初鰹に一両なんて値がついたり、みんなで歌舞伎を見に行ったり、お伊勢参りに行ったりするようになったんですね。
K:バブルですね。
I:そう、文政バブル絶頂期というのが、今の日本人の江戸のイメージを作り上げているんです。
K:バブルというのはいつか弾けますが、文政バブルも弾けたんでしょうか。
I:ここが非常に賢いところで、急激なバブルを起こさないようにゆっくりとお金の量を増やしていったんですね。年率にすると1%くらいです。1%というのは現代ではすごく少ないんですが、当時はお金の量というのは減るかそのままかどちらかでしたから、その頃としては1%インフレが10年続くというのは充分に影響力のある数字です。そのおかげでとても安定して成長していきました。
K:まさにインフレ・ターゲットですね。
I:やがてバブルも弾ける、というよりもしぼんで終わってしまうのですが、それはこの政策をすすめた老中が在職中に亡くなってしまったからです。そうするとやはり、「こんな貨幣を乱発するような政策はけしからん」という雰囲気になってきます。そうして引き締め政策、つまりデフレ政策がとられるようになりました(天保の改革*2)。さらに、「商人は儲けすぎている」ということになって、規制が増えていきました。
K:そんなことをすれば大変な失業を生み出しますよね。
I:このデフレ政策によって、江戸というのは、ほとんど街の火が消えてしまったような状態になりました。
K:どこかで聞いたような話ですよね(笑)。1980、90年代の日本みたいです。
I:そうなんです。実は日本は江戸時代の頭からこれを繰り返しています。景気が良くなると意図的に引き締めてしまう。80年代後半からのバブルでも、アメリカのサブプライムローンバブルのように派手に弾けることはしないで、意図的に規制や金融引締めを行って潰しましたよね。そこで問題なのは、弾けたときよりも、意図的に潰したときの方がダメージが少なかったと言えるのか、ということです。
K:とんでもない。長期停滞を招きました。
I:弾けた後に手を打った方が軟着陸となったかもしれません。江戸時代の経済史を見ていくと、景気を重視し商人の活躍を評価する人たちと、商人がのさばるような世の中はけしからん、という人たちのせめぎ合いがあるようです。
K:それもどこかで聞いたことがありますね(笑)。
I:はい(笑)。江戸時代はそれでもいいんです。武家政権なわけですから、お侍が一番偉い。でも現代でも何故かそういう考え方が残っているんですね。
K:経済学部が不人気だというお話がありました。私は商学部なんですが、経済学部よりもさらに人気がないんです。ビジネス、商売、というとさらに女子が少なくなります。MBAというと元々商学部なんですが、こちらは何故か人気があります。
I:女性がビジネスに関心を持つ、ということに抵抗を持っている人がいるんですよね。会社の中に優秀な女性を囲い込もうとしない、結婚退職させる、なんていうのはとんでもない資源の浪費です。女性がビジネスに向かないと考えるのは男だけですね。
K:日本の男性だけですよ。日本は先進国のなかでも女性経営者、女性管理職の割合が極端に低いです。その上でそういう浪費をするから景気が回復しないんです。なので、潜在成長率は2%というお話がありましたが、それを越えて成長するためには、お金を刷って、典型的な働き方をしなくても人びとが活躍できる社会にすればいいんですよね。ある意味これだけなんです。
I:そうなんです。僕は非常に単純な一本道だと思っています。
(四日目はここまで)
(五日目)
経済成長って なんで必要なんだろう 芹沢一也・飯田泰之ほか |
I:どうやら人間というのは、毎年2%くらい要領が良くなっていくようなんです。人びとが2%分、より仕事ができるようになっているのに、経済の規模が成長しない場合どうなるかというと、毎年2%の人が必要なくなっていくんです。
K:恐ろしい話です。
I:言い換えると、毎年2%の人が失業していくわけです。アメリカやヨーロッパでは、もちろん経済の成長が2%を下回ることはあるんですが、平均すると2.5%~3%で成長しています。こうなると、いつもちょっと人が足りていないような、そういう状態が維持できます。
K:新しく社会に出る若者の雇用が生まれるわけですね。
I:そうです。それに対して日本の場合、1%かそれ以下の成長がずっと続いています。そうすると、だんだん人が要らなくなってくるわけです。長い目で見ると経済成長の源泉は、人びとが仕事に馴れて、そして新しい発明が生まれ、付加価値をより多く生み出していくことです。個々人が2%の成長を繰り返していく中で、新しい産業が起こり、経済全体も成長していきます。ところが、若者に雇用が足りていないと、2%成長するチャンスがない、ということになりますから、周囲との格差が生まれますし、経済も長期的に停滞します。これを防ぐためには、経済が2%成長しないと話になりません。
K:最低限実質成長率が2%ないと社会が維持できないんですね。
I:定常型社会を目指す、とかよく言われますが、定常型社会というのは0%成長のことではありません。人間の成長に会わせた2%の経済成長がなければ無理です。こういうふうに言うと、経済成長はもう出来ない、と言い返されます。これだけ物が豊かな社会のどこで成長するのか、と。この主張に対する重要な反論は「日本以外全部成長してますが、何か?」です。むしろ、なぜ日本だけできないのか説明して欲しい。なぜか日本では若者でも「もう成長をあきらめよう」というようなことを言う人たちがいますね。
K:アメリカもヨーロッパも成長しているのに。
I:はい。しかも、多くの人が経済成長のイメージとして、米を二倍食うとか、服を二倍買う、という感じでとらえているようです。付加価値という考え方が広まっていないんですね。
K:機会費用の考え方が理解されない、というのが今週のテーマのようになっていますが、付加価値の考え方もですか。
I:どうしても量で考えてしまって、もっと美味しいもの、もっとデザインの優れたもの、という質的な経済成長の考え方になかなか至らないんですね。しかし現実には1970年代に量的な成長というのは終わっています。
K:買い物をするときにいつもより高いシャツを買う、とかそういう成長なんですよね。
I:それと、この本で貧困問題について取り組んでいらっしゃる湯浅誠さんと対談しました。何が貧困をつくりだしているのか? デフレと不況がつくっているんだ、ということが、貧困問題を語る人たちの考えから抜けてしまっているように思いました。
K:私も湯浅さんと対談しましたが、そこが議論になりました。湯浅さんは介護や農業にまわればいい、と言っていましたが、それだけでは全然足りないと思います。
I:現在ここまで失業が深刻になったのは、まさしく不況だからです。さらに、不況で失業者が多いですから、上司は部下にプレッシャーをかけやすくなります。「お前の代わりはいくらでも」というわけです。これが生きづらさ生む要因にもなっているでしょう。このように考えますと、様々な問題がありますが、本丸は景気が悪いこと、です。もし景気が良くなって、人手不足になれば企業は労働者の様々な要求に応じるでしょう。例えば、労働時間を自分で選ぶ、とか。
K:なぜ日本では景気が悪くなると長時間労働になるんでしょう。
I:景気が悪くなると、企業は給料を下げたくなるんですが、これはなかなか実現しません。なので同じ月給で長時間働かせることで時給を下げるわけです。デフレで売上げが落ちてますから、企業としてはそうでもしないとペイしないわけですね。
K:デフレだからこそ長時間労働になるんですね。だからインフレ・ターゲットと総労働時間規制を一緒にしないとだめだと思うんです。そこで最低賃金だけ上げてしまうと、単に失業者を増やすだけになってしまう。
脱貧困の経済学 飯田泰之・雨宮処凛 |
K:民主党はマニュフェストに入れてしまいました。
I:一つカラクリがあるとすれば、日本では最低賃金を守っている企業はほとんどないということです。守っているのは一部の大企業だけ。しかも破ったところで目立った罰則もないですし。なので、今は選挙直前ですが、もしかしたら民主党は最低賃金を上げると主張しても実害はない、と踏んでいるのかもしれません。
K:各政党のマニュフェストを見るたびに、そこが本質じゃないだろう、というような話ばかりです。
I:そうなんですよね。各政党の経済理解の問題もありますが、選挙民の前で経済の話をしてもわかってもらえない、というのもあると思います。インフレにする、なんて言ったら選挙には落ちてしまうでしょうね。増税や再配分のしかたを変更する、というのも同様でしょう。しかし実際には、2%のインフレと2%の実質成長があると、毎年だいたい4.5%税収が伸びるんですね。
K:良い話じゃないですか。今デフレで国債の実質負担がどんどん増えてますよね。額面だけが注目を集めていますが、政府は何を考えているんでしょう。
I:それには財務省内のセクト主義が関係しています。景気が良い時には、国債の額面の金利が上がります。お金を返す時、名目では利子が高くみえるわけですね。それがいやだから、デフレを放置している。
K:ええ!? クーポン(表面金利。国債の額面の金利)なんかより元本のほうがよっぽど大きいじゃないですか。物価が下がれば発行した国債全ての実質負担が上がってしまいます。新しく出す国債の額面の金利なんか問題にならないでしょう?
I:その通りなんですが、「それはウチの課の仕事ではないんで」と言うんですね。「ウチは国債のクーポンを決めるのが仕事であって、返済についてはヨソでやってます」ということです。
K:……。一度二人で行脚しましょうか。国会議員に経済学を知ってもらわないと。
I:どちらの政権になるにせよ、議員の先生方に説明しなくてはいけないでしょうね。ところで、今日紹介した二冊の本の中では、ベーシック・インカムの導入を推奨しています。
K:今の税制や社会保障は、国民を年齢や家族形態で分けて扱っています。そうではなくて、人びとの生活における必要性で分けていくべきですよね。
I:そうですね。そこで一番大きな問題は、日本の若者の場合、税金を取られた後の方が不平等度が上がってしまっているんです。普通の国では、税金というのは多く持っている人から多く取るわけですから、取った後再配分すると、人びとの不平等はちょっと是正されるはずなんです。ところが日本の場合は不平等が拡大されてしまう。
K:特に高所得者の負担が意外と低いんです。これは社会保障料が一定額であるからだと思います。どんなに貧乏でも国民年金保険料には14,660円、どんなにお金持ちでも14,660円です。社会保障における税金の割合を上げて、社会保障料の割合を下げないと不公平感はなくならないでしょう。お金持ちは税金で5割取られてるんだからもう充分だ、と反論してくるでしょうけども。
I:しかしそれも10年くらい前までは最高で75%でした。75%はやり過ぎですが、せめて90年代半ばの水準、60%にはもどして欲しいですね。
K:5割取られるのがイヤな人は法人税にしてしまうんですよね。それでおおむね4割になりますから。他にも抜け穴があります。納税者番号のない弊害です。
I:納税者番号がない、そして消費税がよくわからない大福帳方式、というのが問題です。
K:益税の問題ですね。消費者が税金として支払ったお金が、事業者によって納税されずにどこかに消えてしまう。
I:今日紹介した二冊では、今何が必要なのか語っています。生活が苦しかったり、ビジネスがうまく行かなかったりするその元の原因はなんなのか、知って欲しいですね。
(おしまい)
さて、統計は難しいなあとつくづく思うのですが、日本の経済が過去20年、どれくらい成長したのか、ずばっと言い表すのはなかなか難しいようです。というもの、数値が過去にさかのぼって改訂されることがままあるからです。本編中で飯田先生は「0.数%」「1%かそれ以下」としていますが、扱う数値によって差があるようです。しかしそれでも2%は超えないみたいですよ。(僕の手元にある伊藤元重・下井直毅『マクロ経済学パーフェクトマスター』の付録には2001年までの数値しかありませんが、1990〜2001年の経済成長率の平均は、1.583%です。また、飯田泰之・中里透『コンパクトマクロ経済学』では「1993年から2002年の平均経済成長率は1%前後であり、これは過去の日本経済や最近の先進国と比べてもとくに低い成長率となっています。」[p.170]とあります。)
アメリカの経済学者レベッカ・ワイルダーさんがブログで、FRB、BOE、ECBの比較をしていました。それによると、この3中央銀行の金融緩和は不十分であるかもしれない、とのこと。貸し出しがのびておらず、信用創造が進んでいないので、金融緩和を止めるにはあまりにも早すぎる、としています。もちろんこの比較に我らがBOJは出てきません。だって始めから引き締めてるんだもの。
追記:飯田先生が紹介している伊勢田哲治著『哲学思考トレーニング』を読んで書評を書きました。コチラです。
*1:……。
*2:Wikipediaの天保の改革のページをみると、風紀取り締まりの一環として、歌舞伎の都心からの追放があります。しかも明治まで復活しないんですね。またクメール・ルージュばりに都市住民を農村に強制移住とか、貸出金利の引き下げとかもしてますね。一部の商人が流通を独占しているから物価があがるんだ! として、株仲間が解散させられたりもしました。なぜか21世紀に生きる僕らにとって妙になじみ深い「改革」であります。日本人にとって改革=デフレなんでしょうか。
*2:Wikipediaの天保の改革のページをみると、風紀取り締まりの一環として、歌舞伎の都心からの追放があります。しかも明治まで復活しないんですね。またクメール・ルージュばりに都市住民を農村に強制移住とか、貸出金利の引き下げとかもしてますね。一部の商人が流通を独占しているから物価があがるんだ! として、株仲間が解散させられたりもしました。なぜか21世紀に生きる僕らにとって妙になじみ深い「改革」であります。日本人にとって改革=デフレなんでしょうか。
2009年9月11日金曜日
勝間和代のBook Loversを聴いた
さてちょっと涼しくなってきたので更新再開です。ってさぼってただけだけども。今回は前回の続きじゃなくて、べつの話題。
八月に経済学者の飯田泰之さんが、勝間和代さんの「BOOK LOVERS」というwebラジオ番組に出る、と聞いたので楽しみに待っていました。で、ついでにどんな人たちがこの番組に出てるのか、と思ってさかのぼってみてみたら、元財務官僚の高橋洋一さんが出ているじゃありませんか。この間の衆院選、もし高橋さんが活動できていたら、まああんまり結果は変わらなかったでしょうが、こんな発言のいくらかは減ったかもしれないと思うと、返す返すも残念な事件だったなと思うのでした。
「BOOK LOVERS」は勝間さんが毎週ゲストを迎えて、ゲストおすすめの本を五冊くらい紹介するという番組。10分くらいで、一日一冊紹介したり、時にはトークだけの日もあるという感じ。ゲストには小飼弾さんや、押切もえさんなどなど。
で、僕が聴いたのは高橋さんと飯田さんの回で、とても楽しかったので、今日は勝手にまとめちゃおうという趣向。まずは高橋さんの一週間から。リフレ派はこんなに批判しているのになぜ日銀や財務省は政策を変えないのか、その理由が語られます。長いです。実際の文言とは全然違いますのでご注意。(高橋さんは2008年の12月22日から26日まで、飯田さんは今年の8月17日から21日まで)
追記:飯田さんの回のまとめも書きました。コチラです。
(一日目)
勝間さん(以下 K):財務省の人は東大法学部出身だったりしますが、経済学を学ばなくてもできるものなのでしょうか?
高橋さん(以下 T):経済官僚が経済学を学んでいない国は、確かに珍しい。彼らは経済政策を作る時、経済学を使っていないんです。
K:じゃあ何を使うんですか?
T:雰囲気とか空気を読んだり、政治的な折衝で政策を作る。日本の独特なところといっていいですね。これは90年代以降の日本の経済停滞をどう解釈するか、というところが問題です。マクロ経済政策が失敗したという解釈と、仕方がなかったという解釈。仕方がなかったという人が多いので、なかなか政策が変わっていかない。というのも、日銀も財務省も、失敗したとなれば責任問題になると思っているから。
K:でも責任問題ではないですよね? 間違ったのならば改めればいい。
T:私は過去に役所の評価制度を作る仕事をしてましたが、みんな反対してました。なんであれ役所は評価されるのをいやがりますからね。
K:役所の終身雇用に問題があると思うのですが。
T:身内の論理になってしまいがち。外部からの評価をいやがります。さらに、自分たちの政策を後になって評価することもしません。よくある役所の弊害なんです(笑)。
K:……。でも被害を受けるのは役所の人も含めて国民ですよね。
T:役人はあまり困らないですね。終身雇用で年功序列ですから(笑)。
K:今、非正規雇用の解雇が問題になっています。これも政策の失敗でしょうか?
T:景気を良くしないと対策が難しい問題ですが、景気の底上げをやっていない。
K:財政危機だから景気対策はできない、という話を良く聞きますが。
T:日本政府の負債はネットで300兆円。財務省は1,000兆円とか言っているが、資産が700兆円ある。さらに国には徴税権、つまり税金をあつめる権利があって、これは確実な収入だから、債務超過といっても一般企業と違ってすぐに破産にはならない。借金をいくら増やしてもいいとは言わないが、今すぐ増税という段階ではまるでないんですね。
K:プライマリーバランスが悪いから増税! みたいな議論が横行しています。
T:プライマリーバランスは指標としては財政収支より優れている。プライマリーバランスは企業で言えば営業収支(営業利益)。プライマリーバランスはちょっと景気が良くなれば簡単に改善するものです。景気の話をしないで増税の話をするのがおかしい。
K:増税して景気の足を引っ張るよりも景気を良くしたほうがいい。それも財政じゃなくて金融で、ということですね。
T:そうです。金融というとすぐにゼロ金利だからもう無理っていうんですけど、金融の世界では実質金利(物価の影響を差し引いた金利)でみます。アメリカはもうマイナス金利です。日本は他の国にくらべて引き締めぎみなので円高になってます。円高は景気の足を引っ張ります。そうやって悪循環になってますね。
K:2008年10月の先進各国の協調利下げに日銀は参加しませんでした。
T:驚きましたね。円高になるに決まってます。
K:その三週間後にちょっとだけ利下げしました。
T:後だしにしても意味ないです。他の国と同様に、金融緩和を断行する、と宣言すべきなんですが何故かしませんね。今の日銀総裁は以前、金融を引き締めて失敗した人。なので、ここで緩和策を打って成功してしまうと、過去の失敗を認めなきゃいけなくなると考えている。日本にとっては不幸なことです。
K:いくら財政政策を発動しても金融政策が縮小しては意味がないですよね?
T:両方拡張しないと意味ないです。政府と中央銀行が協力する必要があります。現在はどちらも引き締め気味ですね。協力もしてませんが。
K:それは経済学者にとっては常識だと思うのですが、なぜ政府や日銀には通用しないのでしょう?
T:一つは98年に日銀法を改正するときに、世界的に例がないほど、日銀の独立性を強めてしまったこと。それで日銀が政府を無視するようになった。法律をつくった人たちがあまりよく分かってなかったんですね。もう一つは政府のリーダーシップの問題。麻生総理(当時)が金融政策を否定してしまっている。
K:なぜ?
T:麻生さんに最初に言った人がいるから。誰かが麻生さんに「財政政策だけでいきましょう」と言って、それを麻生さんが表で言っちゃう。そうなると、それをひっくり返すのは難しくなってしまう。よくあるパターンです(笑)。
(ここまで一日目)
(二日目)
T:経済政策のしわよせはどこに行くかというと、この本に描かれているような所得の低い人たちのところに行きます。
K:私たちは金銭格差ばかり問題にしがちですが、人的な資本でも格差ができてしまっている。経済政策で景気が良くなれば、こういった窮状はなくなるのでしょうか?
T:ちょっと景気が良くなればそれで解決、という話ではないです。でも、一番最初にするべきことは上げ潮、つまり景気を良くして失業を減らすことです。しかし失業率だけでは非正規の窮状は分からないですから注意が必要です。
K:上げ潮という考えには私も賛成ですが、小泉・竹中路線ではそれをねらったにも関わらず格差が拡大したという批判があります。
T:上げ潮で一番重要なのは最下層の所得を上げること。ですが、それがうまく行かなかったのは事実です。平均的にはちょっと上がったんですが、最下層の所得は上がりませんでした。政策としては成功しませんでした。
K:何がいけなかったんでしょう? 最低賃金が低すぎる?
T:名目成長率が上がらなかったことです。名目成長率が上がると、最下層の賃金は結構上がります。
K:なるほど。彼らには資産も資本もないので、額面通りの賃金が一番重要だから、名目成長率の上昇が直接効くわけですね。
T:名目成長率はこの10年間くらい、0%から2%の間。これはいくら何でも低すぎる。この状態では最低賃金は上げられない。今、政府の目標として、名目成長率2%となっているが、3年間達成していない。これじゃ経済政策は落第です。他の国は4%くらいです。それくらいだと最下層の賃金はけっこう上がります。最下層が上がると、富裕層の所得が増えても、社会的な問題は起きにくいようです。要するに、最下層の賃金が下がるとか上がらない、というのが一番悪い結果です。なので、マイルドインフレーション、物価の上昇が1%か2%、そういう状態にしておけば、名目成長率は4%前後になります。そうなれば様々な貧困対策がやりやすくなりますよ。
K:そんな簡単な道があるのになぜ日銀はそうしないのでしょう?
T:引締めに生き甲斐を見出している人たちですからね。白川総裁の発言を聞いていると、デフレでもよい、と考えているのがよくわかります。
K:どうすればいいんでしょう? 誰が日銀を制御できるんでしょう?
T:総理大臣です。経済財政諮問会議の議長は総理です。日銀総裁が議員として参加してますから、そこで「頼むからやってくれ」と言うだけでいいんです。総理や与党の議員が公の場で日銀に要請して日銀がどう答えるか。流石に無視はできないでしょう。とはいえ、日銀は政府と目標を共有、と口では言いますが、実際には拒否しています。
K:そうなると何のための日銀なのか、と。
T:自分たちの組織を守ることが大事なんでしょう。
K:政府も日銀も国民の幸せのために存在するはずですよね?
T:もちろんそうです。こういう危機的な状況では、言葉は悪いけど「挙国一致体制」になって、各省庁で連携することが大事です。どこの国も同じです。しかし日銀がどこまで政府とコミュニケーションをとっているのか、私にはよくわかりません。
K:これではいくら財政政策でお金を使っても効かないですよね。
T:マンデル=フレミング理論というノーベル経済学賞をとった理論があります。変動相場制のもとで財政政策をするとその国の通貨が強くなり、政策の効果が外国に流れ出てしまう、だから金融政策のほうが有効である、という理論です。まさに今日本で起こっていることです。
K:日銀に方向転換する勇気も度量もなさそうです。
T:総裁選びにすでに問題がありました。総裁になったら何をする、と目標を掲げる人を選ぶべきでしたが、官僚的な人物を選んでしまいました。
(二日目はここまで)
(三日目)
T:この本は私の愛読書です。私は学部では数学を学んでいました。この本はその後経済学を学びはじめたころに読んだ本です。他の経済学の本は何を言っているのかよく分からなかったんですが、この本は理論的で、言葉の定義もちゃんとしているので読みやすかったです。経済学的思考をわかりやすく説明してくれます。私がアメリカに留学しているとき、経済学者が自分の教科書以外でどの本をすすめるかといえばこの本が一位でした。1960年代の本ですが、今でも売れている名著です。
K:現在、新自由主義やリバタリアニズムが攻撃されています。ミルトン・フリードマンといえばそういった主張をする人だと言われますよね。
T:フリードマンを新自由主義者とかリバタリアンと呼ぶのは、ただのレッテルはりだと思います。彼の本を読んでいないんじゃないでしょうか。この本は社会保障について非常に立派なことを言っています。この本には負の所得税というアイディアが載っているんですが、これは今、ヨーロッパで議論されていますよね。彼はそれを50年前に言っているんです。
K:ベーシック・インカム、つまり(全ての、あるいは低所得の)国民に一定水準のお金を支給する、という考え方ですね。フリードマンのそういう主張を無視して攻撃している、と。
T:やっぱり読んでいないんだと思いますよ。著者の初期に出した本というのはその人の考え方をよくあらわすと思います。私は読んでいて彼のやさしさを感じました。数式も使っていないのでおすすめします。
K:さて現在の日本の場合、社会保障費がどんどん減額しています。必要な人にさえ行き渡っていない現状です。
T:そうですね。日本の場合、社会保障を複数の省がバラバラにやっています。その最たるものが、歳入と社会保障がべつの役所で扱われていることです。こういう状態なので、後期高齢者医療制度のように利用者の年金から捻出みたいなことになるんです。こうすると厚生労働省の一部局の裁量の範囲で収まるというわけです。フリードマンは、社会保障は税務当局と一緒にするべきだ、と言っています。そうすれば後期高齢者医療制度でも、年金ではなくて税金を使えます。フリードマンはまた、社会保障を支給する際に官僚の裁量に任せてはいけない、とも言っています。水準を下回る所得の人には無条件にお金をわたすべきだ、と。正しいと思います。今、生活保護の認定基準は現実にはとてもあやふやですから、所得で基準を設ければ必要な人にも行き渡るでしょう。しかしそれをしてしまえば、担当の役人は必要なくなってしまいます。だから反対するでしょうね。
K:官僚は官僚のルールで動いてしまう。
T:フリードマンは官僚について、まず裁量をあたえるな、と言います。どうしても必要なときは明確なルールをかすべきだ、と。この本では補助金の問題も扱っています。官僚を通して補助金を配るのはだめで、たとえば学校に対する補助金は官僚経由にするのではなくて、学生に配ってしまえば良い。そうすれば学生が自分で学校を選びます。そして多くの学生を獲得した学校が学生を通して補助金を受け取るわけです。これをバウチャーと言います。バウチャーを導入すれば、学校は官僚ではなく学生のほうを向くようになるでしょう。この訳本の解説にも書きましたが、日本の現状はフリードマンに笑われてしまうようなものが多いです。たとえば雇用能力開発機構。廃止が議論されて役人が反対していますが、問題はそのお金を他の人に配った時何ができたのか、ということです。フリードマンは政府の機能を全部民間企業にやらせろなんて言っていません。同じことをやるにしても、市場を通してやるやり方も良いんだ、と言っています。彼はある意味で政府の役割を重視していました。私は「役所がやるよりもっと良いやり方がある」ということをフリードマンから学びました。実際仕事でもよく使った考え方ですよ。
K:官僚の問題は、依頼人(プリンシパル)が代理人(エージェント)をどう動かすか、というプリンシパル=エージェント理論の問題なんですよね。
T:そうです。官僚がちゃんと働くようなインセンティブを考えなくてはいけないんです。日本の役人には監視がついていません。そしてお金だけは集ってくるわけですから、やりたい放題なんですね。
(三日目はここまで)
(四日目)
四日目は正直つまらない。高橋さんは行動経済学に対して結構距離をおいている感じだ。まあ僕も同感。まだよくわからないジャンルだと思う。なので一部だけまとめて、あとは飛ばします。
T:プリンストン大学に行っていたときに、まわりに行動経済学をやっている人が結構いました。経済学の想定する合理性があわない人も多いので、こういう本だと入りやすいんじゃないでしょうか。とはいえ、経済学の想定する合理性はあくまで仮定ですから、経済学者が「どんなときでも合理的な人間」の存在を信じているわけではないです。複雑な経済現象をあつかうモデルを作るときに、そのような人間を想定しているだけですし、そこから応用が効きます。が、結果だけみると「経済学はありえない仮定の上に成り立っている」と思われてしまうようです。
(だいぶ略)
K:この本では人は同じものでも自分が持っているものの価値を高く評価しがちである、という考え方が紹介されています。
T:取り替えるのがメンドクサイ、とも言えます。行動経済学の理論で説明できることを、普通の経済学の合理性で説明することもできますね。天の邪鬼に読むと面白いですよ。
(四日目はここまで)
(五日目)
T:この本では普通の教科書を書いたつもりです。数式を使って説明しても分かってもらえないので、普通の言葉で書きました。ベースはオーソドックスな経済理論です。
K:デフレにどう対処するのか、とても分かりやすく書いてあります。
T:政府は100年に一度の危機と言っていますが、それならばそれなりの政策が出てきそうなものですが、そうはなっていない。つまり危機だと思っていないんです。
K:危機だと気づいていればデフレを放置したりしませんよね。
T:今の問題だけじゃなくて、2006年3月にも金融を引き締めました。外国では考えられないことです。その時物価上昇率が0.5%という数字でした。私は当時は総務省にいましたから、統計の基準が変わったことを知っていましたし、もちろん、この指数は数字が実態よりも大きめに出るものだということも知っていました。ですからそう述べました。実際には物価はマイナスだったんです。にもかかわらず、日銀は金融を引き締めてしまいました。景気が悪くなって当然です。なので竹中大臣(当時)にも言ったんです。大臣はその通りだ、と理解してくれましたが、日銀の当時の総裁の福井さんはまったく聞いてくれなかった。とにかく量的緩和の解除をしたかったようです。マスコミや役所の金融政策に対する理解に問題があると感じます。
K:理解の問題ならまだ良いんですが、もうマインドシェアの問題なのではないでしょうか。
T:日銀がこれだけ批判をうけても頑であるというのは、確かに理解の問題ではないかもしれません。
K:補正予算の話題が新聞に載るシェアはとても多いのに、金融政策の話題はほとんどありません。議論の俎上に載せられていないようです。
T:役所は載せたくないんでしょう。アメリカのウォールストリートジャーナル紙などではFRB議長のバーナンキさんの名前がすごくよく出てきます。日本の新聞に白川さんの名前が出てくることはあまりないですね。
K:金融政策を変えるには日銀総裁候補の育成も含め、戦略的な視点が必要なのではないでしょうか?
T:日銀法を変えなければ無理でしょう。
K:しかし私たちは間違いに気づいたわけですから、改善できそうですよね。
T:金融政策の話題は実にマイナーです。この話題が日経新聞にしょっちゅう載るくらいにならないと、間違いに気づいた、とまでは言えないでしょう。
K:前述の協調利下げの時、メディアの反応がほとんどありませんでした。
T:信じられなかったですね。誰かが「ゼロ金利にはできない」というと、それが簡単に受け入れられてしまう。アメリカではすでに量的緩和に入ってますよ。もうやらなきゃいけない時ですが、やりませんね。不思議です。
K:日本人の多くの人が名目と実質の区別がついていない、というのが障害ですね。
T:名目と実質の区別については、ちょっと前の日本銀行の総裁もわかっていませんでした。これは議事録に載ってますよ。今でもゼロ金利が低金利だという認識がありますね。でもそれは名目値が低金利なだけです。
K:以前、海外の金融商品で名目金利が高いものがあるけど、こういうものは買わないでください、という記事を書いたことがあります。計算するととても不利なんです。
T:海外の実質金利の計算は為替の影響があるので難しいかもしれません。でも国内は簡単です。2001年に竹中さんが大臣になったとき、実質金利の良い指標はないか、と問われたので、物価連動国債というのを導入しました。これが実質金利の指標になります。今10年で2%くらいではないでしょうか。
K:名目金利より高いんですよね。
T:はい。将来のデフレ予想、物価が下がるという予想がはいっているからです。名目は0.5%くらいですが、実質は2~2.5%くらいの金利であるわけです。これをみれば実質金利はすぐにわかります。
K:物価のデータは公表されています。メディアがこれを活用していません。
T:そうですね。あと、マーケットには予想値があります。今の数字だけでなく予想値もみなくてはいけません。実質金利というのは 「名目金利」 − 「将来の物価の予想値」 です。今は将来の物価がマイナスなので、実質金利が名目金利を上回っています。驚くべきことですが、日銀の政策決定会合では、最近までこの予想値のデータがありませんでした。
K:それでどうやって政策を決めるんですか?
T:よくわかりません。経済対策閣僚会議を通してこのデータ(ブレーク・イーブン・インフレーション・レート)を使うようにしてもらいました。でも見てる人はすくないようです。日銀の人はこの資料をいっつも批判します。あてにならない、と。それで彼らは自分たちが作ったアンケート調査の予想値を使います。アンケートですから、正直に言って彼らに都合のいい数値がでていると思います。そう言う意味で、今の金融政策はフェアではありません。
K:そういうアンケートではインフレ気味の結果がでるんですよね。
T:もちろんそうです。ブレーク・イーブン・インフレーション・レートですと、マーケットは-2.5%くらいの数値を予想しています。これはとんでもない数字ですよ。
K:最後に、これだけはやって欲しい、という政策を教えてください。
T:デフレというのはお金が必要なのに、どんどん少なくなっていくことです。だからどんどんお金を刷ることが大事です。日本銀行がお金を出さない、というのが現状ですから、ならば政府が出せば良いんです。GDPの5%くらい、20兆から30兆円のお金を政府が発行する、というのを検討して欲しいですね。
K:日銀に頼らない金融政策が可能なわけですね。
T:そうです。それにこのお金は財源になりますよ。増税ではなく、このお金を財源に社会保障をやったらいいと思いますよ。この政策は普段やればインフレになりますが、今はデフレですから丁度いいんですね。デフレの場合この政策が世界でも標準的です。歴史をみても同様です。
K:いっぺんに30兆じゃなくてもいいんですよね。様子を見ながらでも。
T:年10兆で三年間とか。途中で景気がよくなったら止めればいいんです。
K:是非政府紙幣の発行を検討して欲しいですね。
(おしまい)
と、こんな感じです。この放送を聞いて、97年に橋本総理にウソの不良債権額を報告した大蔵省の人たちは、その後どんな人生を歩んでいるんだろう、なんて考えてました。偉いお役人ってのはどの程度先を見てるもんなんでしょうかね。因果な人たちだなと思います。
そして、この放送から総選挙を経て、さて民主政権はどうなることやら、という状況の現在ですが、ブレーク・イーブン・インフレーション・レートはだいたい-1.5%近辺のようです(財務省のページ。「ブレーク・イーブン・インフレ率の推移」でPDFをダウンロードすると見れます)。つまりマーケットはデフレ予想のまま、というわけですね。残念ながら民主党も自民党と同様、金融政策を軽視しているようですから、目覚ましい改善は期待できません。
追記:このエントリを書いた翌朝、こんなニュースが。
【政権交代 どうなる経済】「日銀とアコード」波紋
民主党の大塚議員が、「日銀との政策協調(アコード)をしていく」的な発言をしたら、なんと「金融界などから批判が続出した」ので議員が釈明に追われているというニュース。金融界が誰のことなのか記事中には書いてないけど、日銀に独立性を与えすぎているといういい例だと思います。アコードに言及するだけで大騒ぎなんですね。そのうちやんごとなき日銀関係者の前を横切ったとかで国会議員が辞職しちゃうんじゃないの?
さらに追記 2009/09/23:
Baatarismさんの「混迷するアコード論議」という記事で知ったんですが、民主党大塚議員が事実関係として以下のように語っています。
なんか、こわ〜。Baatarismさんは、日銀が産経新聞の記者を通して議員に圧力をかけようとしたのでは? と推測しています。たしかにそれ以外の理由ってちょっと思いつかないです。こわ〜。
次回は飯田先生の回をまとめてみたいと思います。ひと月以内にはやるぞ>自分
追記:書きました。飯田先生の回のまとめ
八月に経済学者の飯田泰之さんが、勝間和代さんの「BOOK LOVERS」というwebラジオ番組に出る、と聞いたので楽しみに待っていました。で、ついでにどんな人たちがこの番組に出てるのか、と思ってさかのぼってみてみたら、元財務官僚の高橋洋一さんが出ているじゃありませんか。この間の衆院選、もし高橋さんが活動できていたら、まああんまり結果は変わらなかったでしょうが、こんな発言のいくらかは減ったかもしれないと思うと、返す返すも残念な事件だったなと思うのでした。
「BOOK LOVERS」は勝間さんが毎週ゲストを迎えて、ゲストおすすめの本を五冊くらい紹介するという番組。10分くらいで、一日一冊紹介したり、時にはトークだけの日もあるという感じ。ゲストには小飼弾さんや、押切もえさんなどなど。
で、僕が聴いたのは高橋さんと飯田さんの回で、とても楽しかったので、今日は勝手にまとめちゃおうという趣向。まずは高橋さんの一週間から。リフレ派はこんなに批判しているのになぜ日銀や財務省は政策を変えないのか、その理由が語られます。長いです。実際の文言とは全然違いますのでご注意。(高橋さんは2008年の12月22日から26日まで、飯田さんは今年の8月17日から21日まで)
追記:飯田さんの回のまとめも書きました。コチラです。
(一日目)
日本は 財政危機ではない! 高橋洋一 |
高橋さん(以下 T):経済官僚が経済学を学んでいない国は、確かに珍しい。彼らは経済政策を作る時、経済学を使っていないんです。
K:じゃあ何を使うんですか?
T:雰囲気とか空気を読んだり、政治的な折衝で政策を作る。日本の独特なところといっていいですね。これは90年代以降の日本の経済停滞をどう解釈するか、というところが問題です。マクロ経済政策が失敗したという解釈と、仕方がなかったという解釈。仕方がなかったという人が多いので、なかなか政策が変わっていかない。というのも、日銀も財務省も、失敗したとなれば責任問題になると思っているから。
K:でも責任問題ではないですよね? 間違ったのならば改めればいい。
T:私は過去に役所の評価制度を作る仕事をしてましたが、みんな反対してました。なんであれ役所は評価されるのをいやがりますからね。
K:役所の終身雇用に問題があると思うのですが。
T:身内の論理になってしまいがち。外部からの評価をいやがります。さらに、自分たちの政策を後になって評価することもしません。よくある役所の弊害なんです(笑)。
K:……。でも被害を受けるのは役所の人も含めて国民ですよね。
T:役人はあまり困らないですね。終身雇用で年功序列ですから(笑)。
K:今、非正規雇用の解雇が問題になっています。これも政策の失敗でしょうか?
T:景気を良くしないと対策が難しい問題ですが、景気の底上げをやっていない。
K:財政危機だから景気対策はできない、という話を良く聞きますが。
T:日本政府の負債はネットで300兆円。財務省は1,000兆円とか言っているが、資産が700兆円ある。さらに国には徴税権、つまり税金をあつめる権利があって、これは確実な収入だから、債務超過といっても一般企業と違ってすぐに破産にはならない。借金をいくら増やしてもいいとは言わないが、今すぐ増税という段階ではまるでないんですね。
K:プライマリーバランスが悪いから増税! みたいな議論が横行しています。
T:プライマリーバランスは指標としては財政収支より優れている。プライマリーバランスは企業で言えば営業収支(営業利益)。プライマリーバランスはちょっと景気が良くなれば簡単に改善するものです。景気の話をしないで増税の話をするのがおかしい。
K:増税して景気の足を引っ張るよりも景気を良くしたほうがいい。それも財政じゃなくて金融で、ということですね。
T:そうです。金融というとすぐにゼロ金利だからもう無理っていうんですけど、金融の世界では実質金利(物価の影響を差し引いた金利)でみます。アメリカはもうマイナス金利です。日本は他の国にくらべて引き締めぎみなので円高になってます。円高は景気の足を引っ張ります。そうやって悪循環になってますね。
K:2008年10月の先進各国の協調利下げに日銀は参加しませんでした。
T:驚きましたね。円高になるに決まってます。
K:その三週間後にちょっとだけ利下げしました。
T:後だしにしても意味ないです。他の国と同様に、金融緩和を断行する、と宣言すべきなんですが何故かしませんね。今の日銀総裁は以前、金融を引き締めて失敗した人。なので、ここで緩和策を打って成功してしまうと、過去の失敗を認めなきゃいけなくなると考えている。日本にとっては不幸なことです。
K:いくら財政政策を発動しても金融政策が縮小しては意味がないですよね?
T:両方拡張しないと意味ないです。政府と中央銀行が協力する必要があります。現在はどちらも引き締め気味ですね。協力もしてませんが。
K:それは経済学者にとっては常識だと思うのですが、なぜ政府や日銀には通用しないのでしょう?
T:一つは98年に日銀法を改正するときに、世界的に例がないほど、日銀の独立性を強めてしまったこと。それで日銀が政府を無視するようになった。法律をつくった人たちがあまりよく分かってなかったんですね。もう一つは政府のリーダーシップの問題。麻生総理(当時)が金融政策を否定してしまっている。
K:なぜ?
T:麻生さんに最初に言った人がいるから。誰かが麻生さんに「財政政策だけでいきましょう」と言って、それを麻生さんが表で言っちゃう。そうなると、それをひっくり返すのは難しくなってしまう。よくあるパターンです(笑)。
(ここまで一日目)
(二日目)
「生きづらさ」について 萱野稔人・雨宮処凛 |
K:私たちは金銭格差ばかり問題にしがちですが、人的な資本でも格差ができてしまっている。経済政策で景気が良くなれば、こういった窮状はなくなるのでしょうか?
T:ちょっと景気が良くなればそれで解決、という話ではないです。でも、一番最初にするべきことは上げ潮、つまり景気を良くして失業を減らすことです。しかし失業率だけでは非正規の窮状は分からないですから注意が必要です。
K:上げ潮という考えには私も賛成ですが、小泉・竹中路線ではそれをねらったにも関わらず格差が拡大したという批判があります。
T:上げ潮で一番重要なのは最下層の所得を上げること。ですが、それがうまく行かなかったのは事実です。平均的にはちょっと上がったんですが、最下層の所得は上がりませんでした。政策としては成功しませんでした。
K:何がいけなかったんでしょう? 最低賃金が低すぎる?
T:名目成長率が上がらなかったことです。名目成長率が上がると、最下層の賃金は結構上がります。
K:なるほど。彼らには資産も資本もないので、額面通りの賃金が一番重要だから、名目成長率の上昇が直接効くわけですね。
T:名目成長率はこの10年間くらい、0%から2%の間。これはいくら何でも低すぎる。この状態では最低賃金は上げられない。今、政府の目標として、名目成長率2%となっているが、3年間達成していない。これじゃ経済政策は落第です。他の国は4%くらいです。それくらいだと最下層の賃金はけっこう上がります。最下層が上がると、富裕層の所得が増えても、社会的な問題は起きにくいようです。要するに、最下層の賃金が下がるとか上がらない、というのが一番悪い結果です。なので、マイルドインフレーション、物価の上昇が1%か2%、そういう状態にしておけば、名目成長率は4%前後になります。そうなれば様々な貧困対策がやりやすくなりますよ。
K:そんな簡単な道があるのになぜ日銀はそうしないのでしょう?
T:引締めに生き甲斐を見出している人たちですからね。白川総裁の発言を聞いていると、デフレでもよい、と考えているのがよくわかります。
K:どうすればいいんでしょう? 誰が日銀を制御できるんでしょう?
T:総理大臣です。経済財政諮問会議の議長は総理です。日銀総裁が議員として参加してますから、そこで「頼むからやってくれ」と言うだけでいいんです。総理や与党の議員が公の場で日銀に要請して日銀がどう答えるか。流石に無視はできないでしょう。とはいえ、日銀は政府と目標を共有、と口では言いますが、実際には拒否しています。
K:そうなると何のための日銀なのか、と。
T:自分たちの組織を守ることが大事なんでしょう。
K:政府も日銀も国民の幸せのために存在するはずですよね?
T:もちろんそうです。こういう危機的な状況では、言葉は悪いけど「挙国一致体制」になって、各省庁で連携することが大事です。どこの国も同じです。しかし日銀がどこまで政府とコミュニケーションをとっているのか、私にはよくわかりません。
K:これではいくら財政政策でお金を使っても効かないですよね。
T:マンデル=フレミング理論というノーベル経済学賞をとった理論があります。変動相場制のもとで財政政策をするとその国の通貨が強くなり、政策の効果が外国に流れ出てしまう、だから金融政策のほうが有効である、という理論です。まさに今日本で起こっていることです。
K:日銀に方向転換する勇気も度量もなさそうです。
T:総裁選びにすでに問題がありました。総裁になったら何をする、と目標を掲げる人を選ぶべきでしたが、官僚的な人物を選んでしまいました。
(二日目はここまで)
(三日目)
資本主義と自由 ミルトン・フリードマン |
K:現在、新自由主義やリバタリアニズムが攻撃されています。ミルトン・フリードマンといえばそういった主張をする人だと言われますよね。
T:フリードマンを新自由主義者とかリバタリアンと呼ぶのは、ただのレッテルはりだと思います。彼の本を読んでいないんじゃないでしょうか。この本は社会保障について非常に立派なことを言っています。この本には負の所得税というアイディアが載っているんですが、これは今、ヨーロッパで議論されていますよね。彼はそれを50年前に言っているんです。
K:ベーシック・インカム、つまり(全ての、あるいは低所得の)国民に一定水準のお金を支給する、という考え方ですね。フリードマンのそういう主張を無視して攻撃している、と。
T:やっぱり読んでいないんだと思いますよ。著者の初期に出した本というのはその人の考え方をよくあらわすと思います。私は読んでいて彼のやさしさを感じました。数式も使っていないのでおすすめします。
K:さて現在の日本の場合、社会保障費がどんどん減額しています。必要な人にさえ行き渡っていない現状です。
T:そうですね。日本の場合、社会保障を複数の省がバラバラにやっています。その最たるものが、歳入と社会保障がべつの役所で扱われていることです。こういう状態なので、後期高齢者医療制度のように利用者の年金から捻出みたいなことになるんです。こうすると厚生労働省の一部局の裁量の範囲で収まるというわけです。フリードマンは、社会保障は税務当局と一緒にするべきだ、と言っています。そうすれば後期高齢者医療制度でも、年金ではなくて税金を使えます。フリードマンはまた、社会保障を支給する際に官僚の裁量に任せてはいけない、とも言っています。水準を下回る所得の人には無条件にお金をわたすべきだ、と。正しいと思います。今、生活保護の認定基準は現実にはとてもあやふやですから、所得で基準を設ければ必要な人にも行き渡るでしょう。しかしそれをしてしまえば、担当の役人は必要なくなってしまいます。だから反対するでしょうね。
K:官僚は官僚のルールで動いてしまう。
T:フリードマンは官僚について、まず裁量をあたえるな、と言います。どうしても必要なときは明確なルールをかすべきだ、と。この本では補助金の問題も扱っています。官僚を通して補助金を配るのはだめで、たとえば学校に対する補助金は官僚経由にするのではなくて、学生に配ってしまえば良い。そうすれば学生が自分で学校を選びます。そして多くの学生を獲得した学校が学生を通して補助金を受け取るわけです。これをバウチャーと言います。バウチャーを導入すれば、学校は官僚ではなく学生のほうを向くようになるでしょう。この訳本の解説にも書きましたが、日本の現状はフリードマンに笑われてしまうようなものが多いです。たとえば雇用能力開発機構。廃止が議論されて役人が反対していますが、問題はそのお金を他の人に配った時何ができたのか、ということです。フリードマンは政府の機能を全部民間企業にやらせろなんて言っていません。同じことをやるにしても、市場を通してやるやり方も良いんだ、と言っています。彼はある意味で政府の役割を重視していました。私は「役所がやるよりもっと良いやり方がある」ということをフリードマンから学びました。実際仕事でもよく使った考え方ですよ。
K:官僚の問題は、依頼人(プリンシパル)が代理人(エージェント)をどう動かすか、というプリンシパル=エージェント理論の問題なんですよね。
T:そうです。官僚がちゃんと働くようなインセンティブを考えなくてはいけないんです。日本の役人には監視がついていません。そしてお金だけは集ってくるわけですから、やりたい放題なんですね。
(三日目はここまで)
(四日目)
経済は感情で動く マッテオ・モッテルリーニ |
四日目は正直つまらない。高橋さんは行動経済学に対して結構距離をおいている感じだ。まあ僕も同感。まだよくわからないジャンルだと思う。なので一部だけまとめて、あとは飛ばします。
T:プリンストン大学に行っていたときに、まわりに行動経済学をやっている人が結構いました。経済学の想定する合理性があわない人も多いので、こういう本だと入りやすいんじゃないでしょうか。とはいえ、経済学の想定する合理性はあくまで仮定ですから、経済学者が「どんなときでも合理的な人間」の存在を信じているわけではないです。複雑な経済現象をあつかうモデルを作るときに、そのような人間を想定しているだけですし、そこから応用が効きます。が、結果だけみると「経済学はありえない仮定の上に成り立っている」と思われてしまうようです。
(だいぶ略)
K:この本では人は同じものでも自分が持っているものの価値を高く評価しがちである、という考え方が紹介されています。
T:取り替えるのがメンドクサイ、とも言えます。行動経済学の理論で説明できることを、普通の経済学の合理性で説明することもできますね。天の邪鬼に読むと面白いですよ。
(四日目はここまで)
(五日目)
この金融政策が 日本経済を救う 高橋洋一 |
K:デフレにどう対処するのか、とても分かりやすく書いてあります。
T:政府は100年に一度の危機と言っていますが、それならばそれなりの政策が出てきそうなものですが、そうはなっていない。つまり危機だと思っていないんです。
K:危機だと気づいていればデフレを放置したりしませんよね。
T:今の問題だけじゃなくて、2006年3月にも金融を引き締めました。外国では考えられないことです。その時物価上昇率が0.5%という数字でした。私は当時は総務省にいましたから、統計の基準が変わったことを知っていましたし、もちろん、この指数は数字が実態よりも大きめに出るものだということも知っていました。ですからそう述べました。実際には物価はマイナスだったんです。にもかかわらず、日銀は金融を引き締めてしまいました。景気が悪くなって当然です。なので竹中大臣(当時)にも言ったんです。大臣はその通りだ、と理解してくれましたが、日銀の当時の総裁の福井さんはまったく聞いてくれなかった。とにかく量的緩和の解除をしたかったようです。マスコミや役所の金融政策に対する理解に問題があると感じます。
K:理解の問題ならまだ良いんですが、もうマインドシェアの問題なのではないでしょうか。
T:日銀がこれだけ批判をうけても頑であるというのは、確かに理解の問題ではないかもしれません。
K:補正予算の話題が新聞に載るシェアはとても多いのに、金融政策の話題はほとんどありません。議論の俎上に載せられていないようです。
T:役所は載せたくないんでしょう。アメリカのウォールストリートジャーナル紙などではFRB議長のバーナンキさんの名前がすごくよく出てきます。日本の新聞に白川さんの名前が出てくることはあまりないですね。
K:金融政策を変えるには日銀総裁候補の育成も含め、戦略的な視点が必要なのではないでしょうか?
T:日銀法を変えなければ無理でしょう。
K:しかし私たちは間違いに気づいたわけですから、改善できそうですよね。
T:金融政策の話題は実にマイナーです。この話題が日経新聞にしょっちゅう載るくらいにならないと、間違いに気づいた、とまでは言えないでしょう。
K:前述の協調利下げの時、メディアの反応がほとんどありませんでした。
T:信じられなかったですね。誰かが「ゼロ金利にはできない」というと、それが簡単に受け入れられてしまう。アメリカではすでに量的緩和に入ってますよ。もうやらなきゃいけない時ですが、やりませんね。不思議です。
K:日本人の多くの人が名目と実質の区別がついていない、というのが障害ですね。
T:名目と実質の区別については、ちょっと前の日本銀行の総裁もわかっていませんでした。これは議事録に載ってますよ。今でもゼロ金利が低金利だという認識がありますね。でもそれは名目値が低金利なだけです。
K:以前、海外の金融商品で名目金利が高いものがあるけど、こういうものは買わないでください、という記事を書いたことがあります。計算するととても不利なんです。
T:海外の実質金利の計算は為替の影響があるので難しいかもしれません。でも国内は簡単です。2001年に竹中さんが大臣になったとき、実質金利の良い指標はないか、と問われたので、物価連動国債というのを導入しました。これが実質金利の指標になります。今10年で2%くらいではないでしょうか。
K:名目金利より高いんですよね。
T:はい。将来のデフレ予想、物価が下がるという予想がはいっているからです。名目は0.5%くらいですが、実質は2~2.5%くらいの金利であるわけです。これをみれば実質金利はすぐにわかります。
K:物価のデータは公表されています。メディアがこれを活用していません。
T:そうですね。あと、マーケットには予想値があります。今の数字だけでなく予想値もみなくてはいけません。実質金利というのは 「名目金利」 − 「将来の物価の予想値」 です。今は将来の物価がマイナスなので、実質金利が名目金利を上回っています。驚くべきことですが、日銀の政策決定会合では、最近までこの予想値のデータがありませんでした。
K:それでどうやって政策を決めるんですか?
T:よくわかりません。経済対策閣僚会議を通してこのデータ(ブレーク・イーブン・インフレーション・レート)を使うようにしてもらいました。でも見てる人はすくないようです。日銀の人はこの資料をいっつも批判します。あてにならない、と。それで彼らは自分たちが作ったアンケート調査の予想値を使います。アンケートですから、正直に言って彼らに都合のいい数値がでていると思います。そう言う意味で、今の金融政策はフェアではありません。
K:そういうアンケートではインフレ気味の結果がでるんですよね。
T:もちろんそうです。ブレーク・イーブン・インフレーション・レートですと、マーケットは-2.5%くらいの数値を予想しています。これはとんでもない数字ですよ。
K:最後に、これだけはやって欲しい、という政策を教えてください。
T:デフレというのはお金が必要なのに、どんどん少なくなっていくことです。だからどんどんお金を刷ることが大事です。日本銀行がお金を出さない、というのが現状ですから、ならば政府が出せば良いんです。GDPの5%くらい、20兆から30兆円のお金を政府が発行する、というのを検討して欲しいですね。
K:日銀に頼らない金融政策が可能なわけですね。
T:そうです。それにこのお金は財源になりますよ。増税ではなく、このお金を財源に社会保障をやったらいいと思いますよ。この政策は普段やればインフレになりますが、今はデフレですから丁度いいんですね。デフレの場合この政策が世界でも標準的です。歴史をみても同様です。
K:いっぺんに30兆じゃなくてもいいんですよね。様子を見ながらでも。
T:年10兆で三年間とか。途中で景気がよくなったら止めればいいんです。
K:是非政府紙幣の発行を検討して欲しいですね。
(おしまい)
と、こんな感じです。この放送を聞いて、97年に橋本総理にウソの不良債権額を報告した大蔵省の人たちは、その後どんな人生を歩んでいるんだろう、なんて考えてました。偉いお役人ってのはどの程度先を見てるもんなんでしょうかね。因果な人たちだなと思います。
そして、この放送から総選挙を経て、さて民主政権はどうなることやら、という状況の現在ですが、ブレーク・イーブン・インフレーション・レートはだいたい-1.5%近辺のようです(財務省のページ。「ブレーク・イーブン・インフレ率の推移」でPDFをダウンロードすると見れます)。つまりマーケットはデフレ予想のまま、というわけですね。残念ながら民主党も自民党と同様、金融政策を軽視しているようですから、目覚ましい改善は期待できません。
追記:このエントリを書いた翌朝、こんなニュースが。
【政権交代 どうなる経済】「日銀とアコード」波紋
民主党の大塚議員が、「日銀との政策協調(アコード)をしていく」的な発言をしたら、なんと「金融界などから批判が続出した」ので議員が釈明に追われているというニュース。金融界が誰のことなのか記事中には書いてないけど、日銀に独立性を与えすぎているといういい例だと思います。アコードに言及するだけで大騒ぎなんですね。そのうちやんごとなき日銀関係者の前を横切ったとかで国会議員が辞職しちゃうんじゃないの?
さらに追記 2009/09/23:
Baatarismさんの「混迷するアコード論議」という記事で知ったんですが、民主党大塚議員が事実関係として以下のように語っています。
今日の大手紙及びその関連紙が、「アコード」に関連した動きについて興味深い報道をしていました。おもしろく読ませて頂きましたが、記事にあるような「批判続出」ということは全くありません。「火消しに奔走」という事実もありません。日銀からのクレームも一切ありません。記事を書いたと思われる記者からの取材もありません。驚くべきことです。マスコミの体質は社会にも大きな影響を与えますので、報道の質の向上に真面目に取り組んでいる記者、正当派のジャーナリストの取材にはできる限り応じていきたいと思います。
なんか、こわ〜。Baatarismさんは、日銀が産経新聞の記者を通して議員に圧力をかけようとしたのでは? と推測しています。たしかにそれ以外の理由ってちょっと思いつかないです。こわ〜。
次回は飯田先生の回をまとめてみたいと思います。ひと月以内にはやるぞ>自分
追記:書きました。飯田先生の回のまとめ
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