2009年9月11日金曜日

勝間和代のBook Loversを聴いた

さてちょっと涼しくなってきたので更新再開です。ってさぼってただけだけども。今回は前回の続きじゃなくて、べつの話題。

八月に経済学者の飯田泰之さんが、勝間和代さんの「BOOK LOVERS」というwebラジオ番組に出る、と聞いたので楽しみに待っていました。で、ついでにどんな人たちがこの番組に出てるのか、と思ってさかのぼってみてみたら、元財務官僚の高橋洋一さんが出ているじゃありませんか。この間の衆院選、もし高橋さんが活動できていたら、まああんまり結果は変わらなかったでしょうが、こんな発言のいくらかは減ったかもしれないと思うと、返す返すも残念な事件だったなと思うのでした。

「BOOK LOVERS」は勝間さんが毎週ゲストを迎えて、ゲストおすすめの本を五冊くらい紹介するという番組。10分くらいで、一日一冊紹介したり、時にはトークだけの日もあるという感じ。ゲストには小飼弾さんや、押切もえさんなどなど。

で、僕が聴いたのは高橋さんと飯田さんの回で、とても楽しかったので、今日は勝手にまとめちゃおうという趣向。まずは高橋さんの一週間から。リフレ派はこんなに批判しているのになぜ日銀や財務省は政策を変えないのか、その理由が語られます。長いです。実際の文言とは全然違いますのでご注意。(高橋さんは2008年の12月22日から26日まで、飯田さんは今年の8月17日から21日まで)

追記:飯田さんの回のまとめも書きました。コチラです。

(一日目)
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日本は
財政危機ではない!
高橋洋一
勝間さん(以下 K):財務省の人は東大法学部出身だったりしますが、経済学を学ばなくてもできるものなのでしょうか?

高橋さん(以下 T):経済官僚が経済学を学んでいない国は、確かに珍しい。彼らは経済政策を作る時、経済学を使っていないんです。

K:じゃあ何を使うんですか?

T:雰囲気とか空気を読んだり、政治的な折衝で政策を作る。日本の独特なところといっていいですね。これは90年代以降の日本の経済停滞をどう解釈するか、というところが問題です。マクロ経済政策が失敗したという解釈と、仕方がなかったという解釈。仕方がなかったという人が多いので、なかなか政策が変わっていかない。というのも、日銀も財務省も、失敗したとなれば責任問題になると思っているから。

K:でも責任問題ではないですよね? 間違ったのならば改めればいい。

T:私は過去に役所の評価制度を作る仕事をしてましたが、みんな反対してました。なんであれ役所は評価されるのをいやがりますからね。

K:役所の終身雇用に問題があると思うのですが。

T:身内の論理になってしまいがち。外部からの評価をいやがります。さらに、自分たちの政策を後になって評価することもしません。よくある役所の弊害なんです(笑)。

K:……。でも被害を受けるのは役所の人も含めて国民ですよね。

T:役人はあまり困らないですね。終身雇用で年功序列ですから(笑)。

K:今、非正規雇用の解雇が問題になっています。これも政策の失敗でしょうか?

T:景気を良くしないと対策が難しい問題ですが、景気の底上げをやっていない。

K:財政危機だから景気対策はできない、という話を良く聞きますが。

T:日本政府の負債はネットで300兆円。財務省は1,000兆円とか言っているが、資産が700兆円ある。さらに国には徴税権、つまり税金をあつめる権利があって、これは確実な収入だから、債務超過といっても一般企業と違ってすぐに破産にはならない。借金をいくら増やしてもいいとは言わないが、今すぐ増税という段階ではまるでないんですね。

K:プライマリーバランスが悪いから増税! みたいな議論が横行しています。

T:プライマリーバランスは指標としては財政収支より優れている。プライマリーバランスは企業で言えば営業収支(営業利益)。プライマリーバランスはちょっと景気が良くなれば簡単に改善するものです。景気の話をしないで増税の話をするのがおかしい。

K:増税して景気の足を引っ張るよりも景気を良くしたほうがいい。それも財政じゃなくて金融で、ということですね。

T:そうです。金融というとすぐにゼロ金利だからもう無理っていうんですけど、金融の世界では実質金利(物価の影響を差し引いた金利)でみます。アメリカはもうマイナス金利です。日本は他の国にくらべて引き締めぎみなので円高になってます。円高は景気の足を引っ張ります。そうやって悪循環になってますね。

K:2008年10月の先進各国の協調利下げに日銀は参加しませんでした。

T:驚きましたね。円高になるに決まってます。

K:その三週間後にちょっとだけ利下げしました。

T:後だしにしても意味ないです。他の国と同様に、金融緩和を断行する、と宣言すべきなんですが何故かしませんね。今の日銀総裁は以前、金融を引き締めて失敗した人。なので、ここで緩和策を打って成功してしまうと、過去の失敗を認めなきゃいけなくなると考えている。日本にとっては不幸なことです。

K:いくら財政政策を発動しても金融政策が縮小しては意味がないですよね?

T:両方拡張しないと意味ないです。政府と中央銀行が協力する必要があります。現在はどちらも引き締め気味ですね。協力もしてませんが。

K:それは経済学者にとっては常識だと思うのですが、なぜ政府や日銀には通用しないのでしょう?

T:一つは98年に日銀法を改正するときに、世界的に例がないほど、日銀の独立性を強めてしまったこと。それで日銀が政府を無視するようになった。法律をつくった人たちがあまりよく分かってなかったんですね。もう一つは政府のリーダーシップの問題。麻生総理(当時)が金融政策を否定してしまっている。

K:なぜ?

T:麻生さんに最初に言った人がいるから。誰かが麻生さんに「財政政策だけでいきましょう」と言って、それを麻生さんが表で言っちゃう。そうなると、それをひっくり返すのは難しくなってしまう。よくあるパターンです(笑)。

(ここまで一日目)
(二日目)
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「生きづらさ」について
萱野稔人・雨宮処凛
T:経済政策のしわよせはどこに行くかというと、この本に描かれているような所得の低い人たちのところに行きます。

K:私たちは金銭格差ばかり問題にしがちですが、人的な資本でも格差ができてしまっている。経済政策で景気が良くなれば、こういった窮状はなくなるのでしょうか?

T:ちょっと景気が良くなればそれで解決、という話ではないです。でも、一番最初にするべきことは上げ潮、つまり景気を良くして失業を減らすことです。しかし失業率だけでは非正規の窮状は分からないですから注意が必要です。

K:上げ潮という考えには私も賛成ですが、小泉・竹中路線ではそれをねらったにも関わらず格差が拡大したという批判があります。

T:上げ潮で一番重要なのは最下層の所得を上げること。ですが、それがうまく行かなかったのは事実です。平均的にはちょっと上がったんですが、最下層の所得は上がりませんでした。政策としては成功しませんでした。

K:何がいけなかったんでしょう? 最低賃金が低すぎる?

T:名目成長率が上がらなかったことです。名目成長率が上がると、最下層の賃金は結構上がります。

K:なるほど。彼らには資産も資本もないので、額面通りの賃金が一番重要だから、名目成長率の上昇が直接効くわけですね。

T:名目成長率はこの10年間くらい、0%から2%の間。これはいくら何でも低すぎる。この状態では最低賃金は上げられない。今、政府の目標として、名目成長率2%となっているが、3年間達成していない。これじゃ経済政策は落第です。他の国は4%くらいです。それくらいだと最下層の賃金はけっこう上がります。最下層が上がると、富裕層の所得が増えても、社会的な問題は起きにくいようです。要するに、最下層の賃金が下がるとか上がらない、というのが一番悪い結果です。なので、マイルドインフレーション、物価の上昇が1%か2%、そういう状態にしておけば、名目成長率は4%前後になります。そうなれば様々な貧困対策がやりやすくなりますよ。

K:そんな簡単な道があるのになぜ日銀はそうしないのでしょう?

T:引締めに生き甲斐を見出している人たちですからね。白川総裁の発言を聞いていると、デフレでもよい、と考えているのがよくわかります。

K:どうすればいいんでしょう? 誰が日銀を制御できるんでしょう?

T:総理大臣です。経済財政諮問会議の議長は総理です。日銀総裁が議員として参加してますから、そこで「頼むからやってくれ」と言うだけでいいんです。総理や与党の議員が公の場で日銀に要請して日銀がどう答えるか。流石に無視はできないでしょう。とはいえ、日銀は政府と目標を共有、と口では言いますが、実際には拒否しています。

K:そうなると何のための日銀なのか、と。

T:自分たちの組織を守ることが大事なんでしょう。

K:政府も日銀も国民の幸せのために存在するはずですよね?

T:もちろんそうです。こういう危機的な状況では、言葉は悪いけど「挙国一致体制」になって、各省庁で連携することが大事です。どこの国も同じです。しかし日銀がどこまで政府とコミュニケーションをとっているのか、私にはよくわかりません。

K:これではいくら財政政策でお金を使っても効かないですよね。

T:マンデル=フレミング理論というノーベル経済学賞をとった理論があります。変動相場制のもとで財政政策をするとその国の通貨が強くなり、政策の効果が外国に流れ出てしまう、だから金融政策のほうが有効である、という理論です。まさに今日本で起こっていることです。

K:日銀に方向転換する勇気も度量もなさそうです。

T:総裁選びにすでに問題がありました。総裁になったら何をする、と目標を掲げる人を選ぶべきでしたが、官僚的な人物を選んでしまいました。

(二日目はここまで)
(三日目)
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資本主義と自由
ミルトン・フリードマン
T:この本は私の愛読書です。私は学部では数学を学んでいました。この本はその後経済学を学びはじめたころに読んだ本です。他の経済学の本は何を言っているのかよく分からなかったんですが、この本は理論的で、言葉の定義もちゃんとしているので読みやすかったです。経済学的思考をわかりやすく説明してくれます。私がアメリカに留学しているとき、経済学者が自分の教科書以外でどの本をすすめるかといえばこの本が一位でした。1960年代の本ですが、今でも売れている名著です。

K:現在、新自由主義やリバタリアニズムが攻撃されています。ミルトン・フリードマンといえばそういった主張をする人だと言われますよね。

T:フリードマンを新自由主義者とかリバタリアンと呼ぶのは、ただのレッテルはりだと思います。彼の本を読んでいないんじゃないでしょうか。この本は社会保障について非常に立派なことを言っています。この本には負の所得税というアイディアが載っているんですが、これは今、ヨーロッパで議論されていますよね。彼はそれを50年前に言っているんです。

K:ベーシック・インカム、つまり(全ての、あるいは低所得の)国民に一定水準のお金を支給する、という考え方ですね。フリードマンのそういう主張を無視して攻撃している、と。

T:やっぱり読んでいないんだと思いますよ。著者の初期に出した本というのはその人の考え方をよくあらわすと思います。私は読んでいて彼のやさしさを感じました。数式も使っていないのでおすすめします。

K:さて現在の日本の場合、社会保障費がどんどん減額しています。必要な人にさえ行き渡っていない現状です。

T:そうですね。日本の場合、社会保障を複数の省がバラバラにやっています。その最たるものが、歳入と社会保障がべつの役所で扱われていることです。こういう状態なので、後期高齢者医療制度のように利用者の年金から捻出みたいなことになるんです。こうすると厚生労働省の一部局の裁量の範囲で収まるというわけです。フリードマンは、社会保障は税務当局と一緒にするべきだ、と言っています。そうすれば後期高齢者医療制度でも、年金ではなくて税金を使えます。フリードマンはまた、社会保障を支給する際に官僚の裁量に任せてはいけない、とも言っています。水準を下回る所得の人には無条件にお金をわたすべきだ、と。正しいと思います。今、生活保護の認定基準は現実にはとてもあやふやですから、所得で基準を設ければ必要な人にも行き渡るでしょう。しかしそれをしてしまえば、担当の役人は必要なくなってしまいます。だから反対するでしょうね。

K:官僚は官僚のルールで動いてしまう。

T:フリードマンは官僚について、まず裁量をあたえるな、と言います。どうしても必要なときは明確なルールをかすべきだ、と。この本では補助金の問題も扱っています。官僚を通して補助金を配るのはだめで、たとえば学校に対する補助金は官僚経由にするのではなくて、学生に配ってしまえば良い。そうすれば学生が自分で学校を選びます。そして多くの学生を獲得した学校が学生を通して補助金を受け取るわけです。これをバウチャーと言います。バウチャーを導入すれば、学校は官僚ではなく学生のほうを向くようになるでしょう。この訳本の解説にも書きましたが、日本の現状はフリードマンに笑われてしまうようなものが多いです。たとえば雇用能力開発機構。廃止が議論されて役人が反対していますが、問題はそのお金を他の人に配った時何ができたのか、ということです。フリードマンは政府の機能を全部民間企業にやらせろなんて言っていません。同じことをやるにしても、市場を通してやるやり方も良いんだ、と言っています。彼はある意味で政府の役割を重視していました。私は「役所がやるよりもっと良いやり方がある」ということをフリードマンから学びました。実際仕事でもよく使った考え方ですよ。

K:官僚の問題は、依頼人(プリンシパル)が代理人(エージェント)をどう動かすか、というプリンシパル=エージェント理論の問題なんですよね。

T:そうです。官僚がちゃんと働くようなインセンティブを考えなくてはいけないんです。日本の役人には監視がついていません。そしてお金だけは集ってくるわけですから、やりたい放題なんですね。

(三日目はここまで)
(四日目)
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経済は感情で動く
マッテオ・モッテルリーニ

四日目は正直つまらない。高橋さんは行動経済学に対して結構距離をおいている感じだ。まあ僕も同感。まだよくわからないジャンルだと思う。なので一部だけまとめて、あとは飛ばします。

T:プリンストン大学に行っていたときに、まわりに行動経済学をやっている人が結構いました。経済学の想定する合理性があわない人も多いので、こういう本だと入りやすいんじゃないでしょうか。とはいえ、経済学の想定する合理性はあくまで仮定ですから、経済学者が「どんなときでも合理的な人間」の存在を信じているわけではないです。複雑な経済現象をあつかうモデルを作るときに、そのような人間を想定しているだけですし、そこから応用が効きます。が、結果だけみると「経済学はありえない仮定の上に成り立っている」と思われてしまうようです。

(だいぶ略)

K:この本では人は同じものでも自分が持っているものの価値を高く評価しがちである、という考え方が紹介されています。

T:取り替えるのがメンドクサイ、とも言えます。行動経済学の理論で説明できることを、普通の経済学の合理性で説明することもできますね。天の邪鬼に読むと面白いですよ。

(四日目はここまで)
(五日目)
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この金融政策が
日本経済を救う
高橋洋一
T:この本では普通の教科書を書いたつもりです。数式を使って説明しても分かってもらえないので、普通の言葉で書きました。ベースはオーソドックスな経済理論です。

K:デフレにどう対処するのか、とても分かりやすく書いてあります。

T:政府は100年に一度の危機と言っていますが、それならばそれなりの政策が出てきそうなものですが、そうはなっていない。つまり危機だと思っていないんです。

K:危機だと気づいていればデフレを放置したりしませんよね。

T:今の問題だけじゃなくて、2006年3月にも金融を引き締めました。外国では考えられないことです。その時物価上昇率が0.5%という数字でした。私は当時は総務省にいましたから、統計の基準が変わったことを知っていましたし、もちろん、この指数は数字が実態よりも大きめに出るものだということも知っていました。ですからそう述べました。実際には物価はマイナスだったんです。にもかかわらず、日銀は金融を引き締めてしまいました。景気が悪くなって当然です。なので竹中大臣(当時)にも言ったんです。大臣はその通りだ、と理解してくれましたが、日銀の当時の総裁の福井さんはまったく聞いてくれなかった。とにかく量的緩和の解除をしたかったようです。マスコミや役所の金融政策に対する理解に問題があると感じます。

K:理解の問題ならまだ良いんですが、もうマインドシェアの問題なのではないでしょうか。

T:日銀がこれだけ批判をうけても頑であるというのは、確かに理解の問題ではないかもしれません。

K:補正予算の話題が新聞に載るシェアはとても多いのに、金融政策の話題はほとんどありません。議論の俎上に載せられていないようです。

T:役所は載せたくないんでしょう。アメリカのウォールストリートジャーナル紙などではFRB議長のバーナンキさんの名前がすごくよく出てきます。日本の新聞に白川さんの名前が出てくることはあまりないですね。

K:金融政策を変えるには日銀総裁候補の育成も含め、戦略的な視点が必要なのではないでしょうか?

T:日銀法を変えなければ無理でしょう。

K:しかし私たちは間違いに気づいたわけですから、改善できそうですよね。

T:金融政策の話題は実にマイナーです。この話題が日経新聞にしょっちゅう載るくらいにならないと、間違いに気づいた、とまでは言えないでしょう。

K:前述の協調利下げの時、メディアの反応がほとんどありませんでした。

T:信じられなかったですね。誰かが「ゼロ金利にはできない」というと、それが簡単に受け入れられてしまう。アメリカではすでに量的緩和に入ってますよ。もうやらなきゃいけない時ですが、やりませんね。不思議です。

K:日本人の多くの人が名目と実質の区別がついていない、というのが障害ですね。

T:名目と実質の区別については、ちょっと前の日本銀行の総裁もわかっていませんでした。これは議事録に載ってますよ。今でもゼロ金利が低金利だという認識がありますね。でもそれは名目値が低金利なだけです。

K:以前、海外の金融商品で名目金利が高いものがあるけど、こういうものは買わないでください、という記事を書いたことがあります。計算するととても不利なんです。

T:海外の実質金利の計算は為替の影響があるので難しいかもしれません。でも国内は簡単です。2001年に竹中さんが大臣になったとき、実質金利の良い指標はないか、と問われたので、物価連動国債というのを導入しました。これが実質金利の指標になります。今10年で2%くらいではないでしょうか。

K:名目金利より高いんですよね。

T:はい。将来のデフレ予想、物価が下がるという予想がはいっているからです。名目は0.5%くらいですが、実質は2~2.5%くらいの金利であるわけです。これをみれば実質金利はすぐにわかります。

K:物価のデータは公表されています。メディアがこれを活用していません。

T:そうですね。あと、マーケットには予想値があります。今の数字だけでなく予想値もみなくてはいけません。実質金利というのは 「名目金利」 − 「将来の物価の予想値」 です。今は将来の物価がマイナスなので、実質金利が名目金利を上回っています。驚くべきことですが、日銀の政策決定会合では、最近までこの予想値のデータがありませんでした。

K:それでどうやって政策を決めるんですか?

T:よくわかりません。経済対策閣僚会議を通してこのデータ(ブレーク・イーブン・インフレーション・レート)を使うようにしてもらいました。でも見てる人はすくないようです。日銀の人はこの資料をいっつも批判します。あてにならない、と。それで彼らは自分たちが作ったアンケート調査の予想値を使います。アンケートですから、正直に言って彼らに都合のいい数値がでていると思います。そう言う意味で、今の金融政策はフェアではありません。

K:そういうアンケートではインフレ気味の結果がでるんですよね。

T:もちろんそうです。ブレーク・イーブン・インフレーション・レートですと、マーケットは-2.5%くらいの数値を予想しています。これはとんでもない数字ですよ。

K:最後に、これだけはやって欲しい、という政策を教えてください。

T:デフレというのはお金が必要なのに、どんどん少なくなっていくことです。だからどんどんお金を刷ることが大事です。日本銀行がお金を出さない、というのが現状ですから、ならば政府が出せば良いんです。GDPの5%くらい、20兆から30兆円のお金を政府が発行する、というのを検討して欲しいですね。

K:日銀に頼らない金融政策が可能なわけですね。

T:そうです。それにこのお金は財源になりますよ。増税ではなく、このお金を財源に社会保障をやったらいいと思いますよ。この政策は普段やればインフレになりますが、今はデフレですから丁度いいんですね。デフレの場合この政策が世界でも標準的です。歴史をみても同様です。

K:いっぺんに30兆じゃなくてもいいんですよね。様子を見ながらでも。

T:年10兆で三年間とか。途中で景気がよくなったら止めればいいんです。

K:是非政府紙幣の発行を検討して欲しいですね。
(おしまい)

と、こんな感じです。この放送を聞いて、97年に橋本総理にウソの不良債権額を報告した大蔵省の人たちは、その後どんな人生を歩んでいるんだろう、なんて考えてました。偉いお役人ってのはどの程度先を見てるもんなんでしょうかね。因果な人たちだなと思います。

そして、この放送から総選挙を経て、さて民主政権はどうなることやら、という状況の現在ですが、ブレーク・イーブン・インフレーション・レートはだいたい-1.5%近辺のようです(財務省のページ。「ブレーク・イーブン・インフレ率の推移」でPDFをダウンロードすると見れます)。つまりマーケットはデフレ予想のまま、というわけですね。残念ながら民主党も自民党と同様、金融政策を軽視しているようですから、目覚ましい改善は期待できません。

追記:このエントリを書いた翌朝、こんなニュースが。

【政権交代 どうなる経済】「日銀とアコード」波紋

民主党の大塚議員が、「日銀との政策協調(アコード)をしていく」的な発言をしたら、なんと「金融界などから批判が続出した」ので議員が釈明に追われているというニュース。金融界が誰のことなのか記事中には書いてないけど、日銀に独立性を与えすぎているといういい例だと思います。アコードに言及するだけで大騒ぎなんですね。そのうちやんごとなき日銀関係者の前を横切ったとかで国会議員が辞職しちゃうんじゃないの?

さらに追記 2009/09/23:

Baatarismさんの「混迷するアコード論議」という記事で知ったんですが、民主党大塚議員が事実関係として以下のように語っています。

今日の大手紙及びその関連紙が、「アコード」に関連した動きについて興味深い報道をしていました。おもしろく読ませて頂きましたが、記事にあるような「批判続出」ということは全くありません。「火消しに奔走」という事実もありません。日銀からのクレームも一切ありません。記事を書いたと思われる記者からの取材もありません。驚くべきことです。マスコミの体質は社会にも大きな影響を与えますので、報道の質の向上に真面目に取り組んでいる記者、正当派のジャーナリストの取材にはできる限り応じていきたいと思います。


なんか、こわ〜。Baatarismさんは、日銀が産経新聞の記者を通して議員に圧力をかけようとしたのでは? と推測しています。たしかにそれ以外の理由ってちょっと思いつかないです。こわ〜。



次回は飯田先生の回をまとめてみたいと思います。ひと月以内にはやるぞ>自分

追記:書きました。飯田先生の回のまとめ

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