新しい経済学の教科書 日経BPムック |
まず冒頭の1章は経済学の基礎的な考え方(比較優位とかインセンティブとか)から始まり、日本経済、ビジネスと経済学、アジア経済、そして個別の経済問題と、本書が扱っているトピックは幅広い。しかも、というか当たり前だけど、どの記事も経済学の基本的な考え方に沿っているから、とても高度な話題が出てきてもさほど難しく感じないでわかった気になっちゃう。
僕が個人的にもっともおすすめするのは6章、「気鋭の論客がズバリ切る! 経済問題の最前線」だ。ここでは20人のエコノミストたちが、メディアと景気、就職氷河期の長期的影響、財政再建、金融危機など具体的な問題について短めに解説した文章が集められている。どの記事もこの社会のどこにどのような問題(というか非効率)があるのかを知るのにとても良い記事だが、それ以上にこれだけの数の経済学者たちがどちらの方角を向いているのか一望できてしまうところがとても良い。もちろん彼らが同じ方向を向いているなんてことはありえない。でも、ある種の方向にだけは絶対に向いていないということにすぐに気づくだろう。ドルの支配体制が、とか、日本の社会構造の変化によりメインバンクが、とか、リフレ政策は異端or時代遅れor禁じ手、とか、彼らはそういう話は絶対にしない。
もしあなたがネット上(や新聞やテレビ)のドラマティックな経済与太話に影響を受けやすい人ならば、本書をお守り代わりとして買うべきだ。そしてアメリカや中国をだしにした経済エンターテイメントや、日本は特殊だ! と言い張るだけの固陋な人々のどこか恫喝めいた決死の逃避行に出くわしたら、素直に本書を開こう。そしてそんな与太を信じるのならば、これだけの数の経済学者を説得しなければならず、そんなことは一生かけても無理だ、ということを思い出そう。
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