2008年9月15日月曜日

鍛える話

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"The Black Swan"
Nassim
N. Taleb
逆境は人を鍛えるか。一般的にいえるかどうかわからないけど、そういうケースもあるかもしれない。けど、一般的に言えないのならば、逆境が人を鍛えるという信念は捨てて、手を差し伸べるべきだろう。どのみちどんな人にも逆境は訪れるものなんだから。

Nassim N. Talebの"The Black Swan"を読み返していると、「厳しく鍛える」ことの意味を問う話が出てきた。本書に記されている例をまとめると、数十匹のネズミがいるとする。ニューヨークのNNT研究所ではこのネズミたちに微弱な放射線を当てて「厳しく鍛える」(そして街に放つ)。当然、数回の実験ののち、生き残ったネズミはわずかな数になる。さて、この生き残ったネズミは強く鍛え上げられた、と言えるだろうか。ニューヨークの街は新種のネズミに支配されるだろう、と言えるだろうか。もちろん言えないし、鍛え上げられてなどいない。むしろ弱っている。

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"Hare brain
Tortoise mind"
Guy Claxton
高いハードルを設定し、厳しい選別を経ることにもリスクはある。最近読んでいる本(Guy Claxton "Hare Brain Tortois Mind")は、人の意識と無意識の関係について書かれた本だが、そこでClaxtonは、意識を使うには多大なエネルギーが必要となるので、計算とか計画とか判断とか暗記とか、意識にむち打って使っていると、無意識(Claxtonは無意識が直観やインスピレーションの源泉であるとする)がお休みしてしまう、という。

脳についても、負荷がつづくと弱体化するということが言えるのだろう。知性のあるハエは早死にする、とかいうニュースを最近聞いたような気がするし。しかし、世の中「厳しくする」ことに正義を感じて正当化している大人が多い。その「正義」の矛先は立場の弱い人たちに向かうし、おまけにもう目的を見失っているからただの嫌がらせになってる。苦しんでいる人が周りにいると自分も苦しいと思うけども。あ、見て見ぬ振りすればいいのか。

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