2009年1月12日月曜日

経済が成長しないのはなぜ?

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コンパクト
日本経済論
原田泰
今回の金融危機以前からすっかり不景気の日本だけど、なんだってこんな感じなのだろう。と、思ったり思わなかったりしていたら、原田泰『コンパクト日本経済論』というテキスト発見。この著者の本はいくつか読んだことがあるので、なんというか何の迷いもなく買いました。で、まだちょっとしか読んでないけど、すごい本です。オススメです。でもちょっと難しいかも。数学が結構でてくるし、僕、全然数学ダメだし。それでもオススメです。「豊かな国と貧しい国はどこが違うのか?」「同じ経済でも成長する時と衰退する時では何が違うのか?」こういった疑問にきっちり、それでいてあっさり答えてくれるのがうれしすぎる。タイトル通り、日本の経済がメインテーマなので、考え方がダイレクトに変わる感じがする。学部の授業で使う教科書なので、もちろん文化論に逃げたりしない(これって良い経済書を選ぶ時の重要なポイントだと思う)。と、まあオススメポイントはいくらでもあるんだけど、僕に教科書の書評は無理なので、ちょっと読んで思ったことを書きます。

経済はなぜ成長するのか。この『日本経済論』では、生産性、資本、労働の三つが合わさって経済が成長していく、としている。つまり、効率の良いやり方(高い生産性)があって、そのやり方に必要な機械設備や場所があり(充分な資本)、多くの人が長時間働いている(労働投入量が多い)と、経済は成長していく=モノやサービスを生み出す量が増えていく。

日本の「失われた十年」においても、意外なことに生産性は伸びていた。が、資本と労働が減ってしまっていたので経済は成長どころではなかった。とくに資本がかなり落ち込んだ。しかも今現在も改善されていないようだ。でも、2003年以降は労働量が増えはじめ、日本経済は回復しつつあった。

じゃあなんで資本と労働は減ったのか。著者は、「実質賃金の上昇」が原因であるとしている。バブル崩壊以降、実は実質賃金が上昇していた。まず週休二日制の導入。これで労働時間が減ったけど給料はそのままだったので、時間あたりの金額は上がったわけだ。そしてデフレ。デフレはお金の価値が上がる現象だから、同じ額の給料でも、デフレが進行すれば以前よりもたくさんモノが買える。つまり給料の価値は上がっているわけだ。

不況なのに実質賃金が上がると、解雇にはいろいろ制約があるので、企業としては新しい雇用を抑制するしかない。さらに人件費が高止まりして、設備投資のための資本を蓄えることができなくなる。そのうえ、デフレになると実質金利が上がるので、見かけ以上に借金が重くなってしまう。企業としては投資よりも返済を優先させざるを得ない。

日本全体の平均をみると生産性が低い=効率が悪いから「失われた十年」になったわけじゃない。とはいえ、それは例外的に生産性の高い企業が平均を引き上げているからであって、一部の製造業以外の生産性は低いままであるようだ。そして、この間に回復した労働投入量は、生産性の低い企業をさらに増やしてるんじゃないだろうか、というのが今回の思いつき。つまり、雇用を守るために若者にしわよせが来たわけだけど、あぶれた彼らの(というか僕らの)労働力が安価になった為に、ある種の企業にとって生産性を向上させるインセンティブが働いていないんじゃないのかな、と思うのだ。

(この段落、表現を修正しました)
非正規雇用なら給料は低くてもいいし、正規雇用でもサービス残業なんて当たり前なんだから、苦労して効率の良いやり方なんか考えなくても、企業は生き残れてしまう。2003年以降、労働投入量が増えて経済は回復しはじめたが、「本書の「労働投入」は、労働の質を考慮していない」、とあるように、手放しで喜べるようなものじゃない。それに大して景気が良くなったわけでもない。依然として資本が経済を成長させるほどには回復していないのだから、新しく仕事が増えたというよりも、団塊世代をバイトに置き換えただけ、みたいな部分もありそうだ。

サービス業の生産性は低いって言われてる。こういう風な話を聞くと、なんか現場の非効率の問題のような気がするけど、ホントはそうではなくて、経営というかマネジメントの問題なんだろうと思う。たとえば無駄に営業時間が長いとか、儲かっていないデリバリーサービスとかはあきらかに現場の効率が悪いという問題じゃない。

そういう企業って派遣やアルバイトに依存してしまって、生産性を高めようなんて気はないように見える。例外的に生産性の高い製造業の企業だって、派遣を大いに活用したわけだけど(だから派遣切りなんてのが話題になるわけだが)、やっぱり国際的な競争をしていれば生産性の向上は避けられない。で、もし多くの企業が生産性を高めようという気になれば、資本の蓄積が進んで、新しい職場が作られはじめるかもしれない。その為には、生産性の高い企業のように国際的な競争に加わるか(あるいは外圧という形で強制的に競争に参加させられるか)、時間あたりの実質賃金のさらなる上昇が必要なんじゃないだろうか。

で、ベーシック・インカムってのは時間あたりの実質賃金を上げるいい手だと思う。これがあればアホみたいな低賃金の職とか無茶苦茶な労働環境の職には人が集まらなくなるだろう。そうすれば、生産性を上げるか職場を増やさないと、産出量が維持(あるいは増加)できなくなる。

バブル崩壊後に実質賃金が上昇したのち、派遣業法が改正されて、企業は安価な労働力を手に入れ、なんとか産出量は増えてきた。今また同じようなことが起きたらどうだろう。移民を大量に受け入れるべき、という話が急展開するんだろうか。既に企業の偉い人たちはそんなことを言ってきているわけだしね。でも、少子化でいずれ労働投入量は減っていくんだから、いい加減に生産性と資本で経済を拡大させる道を模索しろよ、と強く思う。

上手くまとまらなかったけどここでおしまい。こんなに長くなるとは思ってなかった。"Hare brain, Tortoise mind"はちゃんと続けていきますよ(たぶん)。

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