ハーバード大学の経済学教授マンキュー先生がニューヨークタイムスに記事を書いていた。要約すると、不況になると人々はモノやサービスを買わなくなって、しまいには作り出さなくなるので、代わりに政府が買えばいい。すると人々の収入が増えるので、またモノやサービスを買うようになる。と、いうのが伝統的な経済学の教科書に書いてあること。でも最近の研究では政府が公共事業で1ドル使うと、1.4ドル分のモノやサービスが作られてる。ちょっと少ない。で、常々、減税はあんまり効果がないと言われていたけど、これも最近の研究によると、減税1ドル分につき、3ドル分のモノやサービスが作られているそうな。公共事業の倍以上! つまり減税は思った以上に効果があるかもしれない、という話。
この減税の効果についての研究をしたのが、クリスティーナ・ローマー先生で、オバマ政権の経済政策諮問会議(ちゃんとした訳があるはず)の議長に指名された人でもある。なので、オバマ政権は、いままで金持ち優遇政策と揶揄されてきた減税政策にマジで取り組むつもりなんだろう。
で、上のはそのローマー先生のインタビューの動画。オバマ政権の雇用を増やす政策について説明している。要約すると、政府が建物をたてれば建設業の仕事が増えるので、とても分かりやすい。でも減税によって人々がお金を使うとどのような職が増えるか推測するのは難しい。それは人々がどの分野にお金を使うかによるから。でも、減税なら幅広い職種に効果があるはず。そして、作り出される職の数が重要ではないとは言わないけど、職の質、つまりどのような仕事が増えるのか、ということもとても重要。不景気が始まって340万人がフルタイムからパートタイムに移っている。一連の政策で、パートタイムの仕事がフルタイムの仕事に変わるような効果を期待している。健全な経済にとって、「より良い職」はとても重要。単純に職を作り出すのじゃなく、「より良い職」を作り出すことが国民にとっても良いこと。ただお金を使って景気を刺激するだけじゃなくて長期的にも有用な云々。
はい、そこ、ため息つかない。こちらのエントリで書いたけど(そして上手く書けなかったけど)、2003年からの日本の景気回復は、労働力が増えたことによる。つまり職が増えたわけだ。ではどんな職が? そう、派遣やアルバイトの増加や、サービス残業の蔓延などで労働力が安く利用できるようになったので、企業は生産を増やすことができたわけだ。で、国民の生活の質が向上しただろうか。うーん、実感なき景気回復と言われるのも無理はない。
もちろん、回復が無いよりはマシだったろう。でもなあ、人にとって「より良い職」に出会うのはかなり重要なことで、それは不況下では難しくて、だから国は不況を短くする、あるいは特定の職業じゃなくて様々な職が生まれる環境を整える使命があると思うんだけどなあ。
もちろん、減税の効果がホントに以前に思われていた以上にあるのか、よくわからない面もある。でも、こうやってアメリカの動向なんぞを横目で見ていると、我が国って…、という気にはなる。今回の定額給付ってさ、言わば減税じゃん。額が少ないから効果も少ないだろうけど、バラマキだからダメ、という扱いを受けるようなものじゃない。公共事業で特定の職を増やすよりは、なんというか、より民主的な景気刺激策でもあるだろう。額が少ないけど。バラマキ=悪というのは、不景気をナメているとしか思えない。景気が悪いと人が死んだり戦争が起きたりすることもあるんだぜ(放言)。バラマキに一時的でも効果があるのなら、そのことは否定しちゃダメよ。まあ、額が少ないからムキになってもアレなんだけど。
んで、「より良い職」について語る人が少なくないか? と思う。長期的にどうすべきか、という問いが非常に難しいのはわかるけど、それでも「仕事が有るだけマシ」といって諦めてしまうには早すぎるでしょう? 大恐慌時のアメリカのように失業率が25%とかだったら、そりゃ職の質なんかどうでもいいでしょうけどね。
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